その有識者会議では、陛下が何より大切と考える祈りや慰問について、「宮中で国と国民のために祈ってくだされば充分」(渡部昇一・上智大学名誉教授)、「被災地訪問など少々間口を広げられすぎた。慰問は極力おやめになり、お言葉のみで充分」(今谷明・帝京大学特任教授)などの意見が相次ぎ、16人中7人が譲位に慎重・反対の考えを示した。
一方、条件付きを含む容認・賛成は9人だった。そのひとり、元朝日新聞皇室担当記者でジャーナリストの岩井克己さんはこう語る。
「“宮中で祈ればいい”という意見もありましたが、陛下の祈りは、一人ひとりの国民と直に接し寄り添って、どれだけ苦しい思いやつらい経験をしたのかを理解して初めてできる祈りです。宮中にいるだけで行えるものではありません」
有識者会議で進んだ議論に、陛下のご学友でもあるジャーナリストの橋本明さんは、「おそらく陛下は怒っているはずです」と憤りを隠さない。
「陛下は“公務を減らしてくれ”とは一言も言っていません。公務を減らすことは天皇の在り方として受け入れられないから譲位を申し出ているのに、“公務の負担軽減”との名前をつけた有識者会議で譲位を議論するのは、陛下の真意から外れています」
あらわになったのは、有識者会議と陛下の思いとの間に横たわる大きな溝だった。
撮影/雑誌協会代表取材
※女性セブン2017年1月19日号