実は、国(政府)にも国家財政を企業会計の基準で分析したバランスシートがある。最初に作ったのが高橋氏だった。

「1991年から1994年にかけて理財局で財政投融資資金(※注/年金積立金や郵便貯金を預かり、政府系金融機関や特殊法人に貸し付ける資金のこと)のリスクを管理するシステム作りの責任者だった時、必要に迫られて国のバランスシートを作成した。それをみれば国にどれだけの資産があるか、財政が健全かどうかが一目瞭然です」

 高橋氏がバランスシートを作成した当時は「財務省限り」の非公表とされていた。毎年の表が公表されるようになったのは2000年10月からだ。

 ところが、その後現在に至るまで、バランスシートの内容がメディアに取り上げられることはほとんどないまま「財政危機説」ばかりが報道されている。財務省を長く取材してきた東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏がいう。

「国のバランスシートは財務省のホームページに公表され、記者発表もされている。しかし、記者クラブの記者は不勉強で問題意識がないから、内容を吟味することなく、借金の総額だけを見て財政危機と思い込んでいる」

 そこで本誌が高橋氏の解説を踏まえて国のバランスシートを読み解いていくと、興味深い国家財政の“秘密”が見えてきた。

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