◆750兆円の“見えない資産”
財務省が公表している最新の国のバランスシート(平成26年度/2014年度末決算)には、保有する様々な「資産」の金額や「負債」の金額が表示されている。
「資産の部」を一目見てわかるのが、日本政府は約680兆円もの資産を持つ“大資産家”ということだ。国がどんな資産を保有しているかを見ていこう。
まず金融資産から。「現金・預金」が約28兆円。これは各役所の金庫にある手元資金や政府が日銀の口座に預けている預金であり、国家公務員の給料や役所の備品購入、公共事業の工事代金などがここから支払われる。「有価証券」(約139兆円)の保有額が桁外れに巨額なのは、財務省(外国為替特別会計)がドル買いの為替介入で買った米国債を大量に保有しているからだ。
さらに大きな金額が続く。「貸付金」(約138兆円)は特殊法人や独立行政法人などへの貸し付け、「運用寄託金」(約104兆円)は年金積立金のうち政府が運用している金額だ。さらに独立行政法人への「出資金」(約70兆円)など、金融資産の総額は500兆円近くにものぼる。
ちなみに「未収金等」(約11.5兆円)は国税や年金保険料などの未収金分の金額で、「前払い費用」(約4兆円)は福島原発事故の賠償金や廃炉費用のうちまだ使われていない金額である。
次は「固定資産」。役所の庁舎(土地建物)、自衛隊の艦船、戦闘機などの「国有財産」が約29兆円、公共事業で建設した道路や橋、堤防などの「公共用財産」が148兆円と計算されている。
「日本の政府資産は世界一で、金融資産が巨額なのが特徴です。金融資産のうち、官僚の天下り先である特殊法人や独立行政法人などに流している貸付金と出資金を合わせると200兆円にもなる。つまり、天下り先が多いから金融資産が膨れあがった」(高橋氏)
ちなみに米国の連邦政府のバランスシート(2015会計年度)をみると、連邦政府の総資産は約377兆円でそのうち金融資産は約200兆円しかない(1ドル=117円で計算)。日本は経済規模(GDP)では米国の4分の1だが、政府の保有する金融資産は2倍以上あるのだ。