だがアメリカは最初から中国と対決を求めはしない。中国が無法に進出してきたときだけ断固として反応するということだ。これが封じ込め戦略だ。中国の膨張に対しては、これまでのオバマ政権の単なる警告や消極的な「航行の自由作戦」ではなく、アメリカ海軍を出動させ、積極的な武装パトロールを実行するだろう。
トランプ陣営がもう一つ、強い不満を抱いているのは、中国が北朝鮮への経済制裁を履行せず、結果として北朝鮮の核武装や人権弾圧を助長している実態だ。中国は北朝鮮と取引する国営企業の利益を北の核武装阻止という目的より優先させている。
中国側の北朝鮮に接する吉林省や遼寧省の経済利益を優先させているのだ。その結果、北朝鮮は韓国や日本を一気に破壊できる核兵器の開発へと前進する。トランプ新大統領はそんな中国の行動をもう許容しないだろう。
オバマ大統領は中国とうまく接触することで中国のあり方を変えられるという「中国形成可能論」をとってきたと言える。中国との対決や衝突はすべて避けて、中国の出方をじっくりと眺めようというわけだ。アメリカ側の対応次第で中国という国家の本質をも変えられるという論だった。
だがトランプ氏はまったく違う。中国が押してくれば必ず押し返すという姿勢なのだ。
【PROFILE】1942年、ルーマニア生まれ。ロンドン大学、米ジョンズ・ホプキンス大学で学び、国防省長官府任用。現在は戦略国際問題研究所(CSIS)上級アドバイザー。『自滅する中国』『中国4.0』など著書多数。
※SAPIO2017年2月号