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致死率30%、人食いバクテリアからの生還体験告白

2016年は過去最多の感染が報告されている人食いバクテリア(イメージ写真/アフロ)

 悪寒がすると思ったら、急な発熱。ふしぶしの痛みに、嘔吐、下痢…。2016年9月以降のインフルエンザ患者数は147万人。例年以上の猛威に、厚労省はさかんに注意を呼びかけている。でもその症状、もしかしたら違うものかもしれない…。

「1年前のお正月、1月3日のことでした。その日は翌日が仕事始めだったので、部屋を片づけたり家のことをしていました。それでちょっと疲れたなと思ってたら、突然倒れて動けなくなり、気づいたら救急車で病院に搬送されていました。

 下痢や嘔吐がすごくてお医者さんは、“急性胃腸炎でしょう”と言って、点滴を打ってくれました。そうしたら少し回復したのでそのまま帰宅。でも、次の日に39度の熱が出て、その日の午後から咳が止まらなくなって…」

 都内在住の会社員・川上暁子さん(仮名・37才)は、インフルエンザにかかったと思った。当時は長女を出産して7か月。子供を認可保育園に入れるため2015年12月に職場復帰したばかりだった。仕事と子育ての両立は大変だったが、周囲の働くママたちも当然のようにやっていたし、なによりかわいいわが子を見れば、そんな日々の疲労も吹き飛んだ。

「でも、体は正直。かなり疲れていたんだなぁ」

 突然倒れてしまったわが身を振り返って体調管理の甘さを反省した。しかし…。

「咳をするたびに心臓を中心に上半身がしびれる強烈な痛みを感じるようになったんです。いつもなら“寝ていれば治る”と思ったのかもしれませんが、子供も小さかったし、自分自身でも“これはちょっと違う”という感覚があった。それでもう一度、今度は自分で病院へ行って、“ちゃんと検査してほしい”と伝えたんです。でも、今思うとそれがよかった。だってあのとき、ただ寝ていたら、私は1週間も経たないで死んでいたと思う。今こうして娘を抱くこともなかったでしょうね…」(川上さん、以下「」内同)

 いうまでもないが病院には重症患者も多数いることから、川上さんのように「咳がつらいから」という理由だけでは入院にはならない。しかし川上さんには虫の知らせでもあったのか、「入院させてほしい」と懇願し、レントゲンをとったり、血液検査を行った。そして肺に水がたまっていることが判明、体内にひどい炎症反応が見られることもわかった。

 しかし、それでも何が原因なのかはまったくわからないことから、医師は川上さんに転院をすすめた。

 そこは日本の感染症のスペシャリストが集まる『国立国際医療研究センター病院』。川上さんに下された診断はインフルエンザではなく「菌血症」。これは本来無菌である血液に細菌がいる状態のこと。その細菌こそ、最近ニュースになっている、通称、「人食いバクテリア」だった。

 正式名称は「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」。発症から3日以内に死亡することもあり、致死率は30%。2016年は過去最多の460人以上の感染が報告されている。

 川上さんは今は再び仕事復帰も果たし、元気な笑顔を見せているが、一時は手脚の切断や、多臓器不全が懸念されるほど危機的な状況にあった。

 人食いバクテリアの正体についてはほとんどわかっていない。わかっているのは、人から人へ感染することはないものの、「どこにでもいる菌」で、赤ちゃんはかかりにくいが、免疫力が落ちている高齢者や糖尿病患者がかかりやすいといわれていることだけ。それでも川上さんの生還劇にはいくつかのヒントがある。

◆“劇症化”の心当たりはあった

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