米国市場への貢献度について、トヨタの豊田社長はモーターショーで、次のような実績を示した。
「米国で車の開発、生産、販売に携わるトヨタのメンバーは約13万6000人」
「トヨタは米国で30年以上にわたり、2500万台以上の車を生産」
とりわけ15年連続で米国のベストセラーカーとなったカムリの生産拠点であるケンタッキー工場は7700人もの現地従業員を雇用している。
トヨタだけではない。外務省「海外在留邦人数調査統計」によれば、米国内の日系企業総数は毎年増加の一途を辿り、2015年は7849社と10年前より2422社も増えている。東京商工リサーチが業務提携するダンアンドブラッドストリートのデータを見ても、毎年新たに100社以上もの日系現地法人が誕生している。
1980年代の貿易摩擦などを経て、長い時間をかけて米国に進出してきた日本企業にとってみれば、トランプ氏の望む程度の投資など決して難しい話ではないだろう。
トランプ氏の真意をいち早く見抜いていた経営者がいる。ソフトバンクグループ社長の孫正義氏だ。
大統領選後にニューヨークに飛び、総額500億ドル(5.7兆円)の投資と5万人の雇用創出を提示。トランプ氏との2ショット写真が世界中に配信されると、同社の株価は急上昇した。
他にも、昨年末にはパナソニックが米国の新進気鋭の自動車メーカー・テスラモーターズとの提携を発表。米工場にパナソニックが約300億円を投じて太陽光パネルの生産ラインを導入し、2017年夏から生産を始める予定だ。
近年、日本企業は世界での存在感を失いつつあった。トランプ氏がトヨタを“名指し”したことは、世界が再び日本企業に注目し始めている証なのだ。
※週刊ポスト2017年1月27日号