前出・浅井さんによれば、さくら事務所に火災保険の相談に来る人の多くが、必要のない補償に入っているという。それゆえ一部には、節約の名のもと「保険料が安くなるから」といって、安易に補償を外す向きもあるが、それはあまりにも危険だ。
例えば「水災」。2014年8月の広島の土砂災害や2015年9月の関東・東北豪雨でも、「この地域は大丈夫だろう」と水災を外していた家が多かった。水害だけでなく、最近では雪があまり降らないはずの地域が突然の大雪に見舞われることもある。2014年12月には徳島県西部で記録的な大雪が降り、積雪や倒木で集落が孤立するなどの被害が相次いだ。
「水災に関しては、自治体が作成している洪水ハザードマップや浸水予想区域図、洪水履歴図などの資料を参考にしたり、土砂災害危険区域に該当していないかを確認することが大切です。ハザードマップが作られていない自治体も多いので、地形を調べ、役所にも個別に話を聞く。洪水の危険性が低くても、谷底地形の場所では大雨で下水が溢れる“内水氾濫”のリスクもある。慎重に検討すべきです」(松島さん)
その上で、明らかに“無駄な補償”を外していくのが正しい手順。
「例えばマンションの上層階や高台にある家は、水災被害に遭うリスクが少ないので外してもいいでしょう。水災を取り除けば、支払う保険料は10年間で10万円近く安くなることもあります」(松島さん)
最近ではさまざまな特約をつける保険も増えていて、地域によっては入るべきものもあるが、なかには慎重に検討したほうがいい特約もある。浅井さんが例に挙げるのは「類焼損害特約」だ。
「自分の家が火元になって隣近所を延焼させてしまった時にその相手が無保険だったり保険金額を低く設定していたために再建築に足りない費用を補うものです。しかし、今は火災保険の加入率がおよそ80%あり、自分の加入している保険金で費用がまかなわれることが大半。実際にこの特約による請求はほとんどありません」
しっかりと、あり得るリスクに備える分、不要な補償や特約は外して保険料の無駄を省こう。
※女性セブン2017年2月2日号