国際情報

釜山「慰安婦像」設置女子大生を直撃 彼女が設置理由を語る

日韓関係は緊張の度合いを高めている

 釜山の日本総領事館前に置かれた「少女像」が、融和に向かいつつあった日韓を再び引き離そうとしている。政府や自治体の制止を振り払って像設置を進めたのは、釜山の学生団体である。代表は、22歳の女子大生。その真意を訊くべく、ジャーナリスト・織田重明氏が釜山に赴き、渦中のキーマンに直撃した。

 * * *
「撤去しろと言われても、絶対に撤去しません! そもそも少女像は釜山市民だけでなく韓国国民の意志で建てたもの。政府に命令を出せるはずがありません」

 断固としてそう語るのは、馬禧陳(マ・ヒジン)氏(22)。釜山大学に通う女子大生(3年)であるが、昨年末に釜山の日本総領事館前に少女像を設置した市民団体「未来世代が建てる平和の少女像推進委員会(以下、推進委員会)」の代表である。

 釜山の表玄関である釜山駅から歩くこと数分で日本総領事館がある。高さ2mを超える白い壁に囲まれた総領事館前の歩道上にその像があった。ザクザクと短く切られた髪に握りしめた拳、そして裸足と、ソウルの日本大使館前に2011年に設置されたものと瓜二つのデザイン。いずれもソウル郊外に工房を持つ芸術家夫妻が制作したものだ。

 少女像の側には数名の男たちがいる。なにやら市民に声をかけているようだ。

「ぜひ像の隣の空の椅子に座って日本総領事館を睨みつけてください」

 男たちは像を設置した推進委員会のメンバーだという。昨年12月28日に設置しようとしたが、地元の釜山市東区当局によっていったん撤去されたことから、再度撤去されることがないか監視しているのだ。

 設置のための募金活動から東区による撤去に対する大々的な抗議、そして再設置。これら活動を取り仕切った推進委員会の実質的な代表が馬氏である。

 彼女たちに真意を聞くべく、目指したのは、釜山中心部の目抜き通り沿いにある雑居ビル。三階に上り、中の様子をうかがうと、学生たちがミーティングをしていた。近くにいた学生に声をかけて名乗ると、馬氏が現れた。しばらく押し問答の後、インタビューを受けることを承諾した。

 ショートヘアに黒縁の丸メガネで、華奢な体つき。とても運動のリーダーのように見えない。ごく普通の学生だ。だが、その口からは強烈な言葉が飛び出す。

「釜山で少女像を設置しようという動きは、2015年末の韓国と日本の合意の直後に始まったのです。慰安婦のおばあさんたちに事前に何も知らせず、急に決めたこの合意で、慰安婦問題は最終的に解決したとされました。安倍晋三首相が真心から謝罪をしようともしないのに! 日本政府が拠出した10億円は法的賠償でもなんでもない。こんな屈辱的な合意ってあるでしょうか。韓国政府はとんでもない過ちを犯しました。日本政府に慰安婦が性奴隷だったという歴史的事実を認めさせるために像の設置が必要だと考えたのです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
《SNSの偽情報で実害》中途採用に「条件満たさない」応募者が激増した企業、勝手にFラン認定された大学は「少子化の中、学生に来てもらう努力を踏み躙られた」
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
日本復帰2戦目で初勝利を挙げたDeNAの藤浪晋太郎(時事通信フォト)
横浜DeNA・藤浪晋太郎を大事な局面で起用する三浦大輔監督のしたたかな戦略 相手ファンからブーイングを受ける“ヒール”がCSの行方を左右する
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン