亀井:ただ、自国の利益だけを徹底的に追求しようという姿勢はどうなのか。
石原:それはある。彼は「アメリカ・ファースト」と、アメリカ人の心をくすぐる殺し文句を言うけれど、それが行き過ぎると自らに降りかかってくると思う。TPPから抜けるにしても、一番損をするのはアメリカじゃないかと思いますよ。
亀井:いや、“アメリカも損するからやらないだろう”と考えるのは、希望的観測ですよ。「まさかそんな壁はつくらないだろう」と言っていたら、彼は本当にやります。もし「関税障壁をつくる」というなら、「やるならやってみろ。日本も同じように関税障壁をつくるぞ」と突っぱねないと。私は日米交渉でそれをやって、全部成功したんです。
石原:いろいろやったよな。
亀井:運輸大臣だった1990年代半ばの日米航空交渉の時に、ペーニャ運輸長官が電話で「交渉が決裂したから制裁に入る」と言ってきたので、「ああ、どうぞ。日本もイーブンの制裁をやるから」と返したら、「ちょっと待て。再交渉しよう。こっちまで来てくれ」と。再交渉はいいが、なんでワシントンまで行かなきゃならんのだと思って、「じゃあ、ハワイのパールハーバーでやろう」と言ってやったの。
石原:かましたね(笑)。
亀井:そうしたら、「ロスまで来てください」と言ってきた。当時は野茂(英雄)がドジャースで活躍していたから「じゃあ、行くか」って。会談に行く前に、運輸省と外務省と打ち合わせをしようとしたら、外務省の審議官が来ていない。なぜいないのか聞いたら、運輸省の人間が、「外務省を入れるとアメリカに筒抜けになるから呼ばなかった」と言う。
それでロスまで行ったら、相変わらず同じ話を繰り返すので、「どんどん制裁やってくれ、こっちもやるから」と。そうしたら「ちょっと休憩を入れさせてくれ」と言って3~4時間して戻ってきたら、いきなり態度が変わって「これで結構です」となった。大統領と協議したんだろうね。
※週刊ポスト2017年2月17日号