◆「働き者」か「怠け者」か
周囲にいる「真面目な男」を思い浮かべてみよう。勤勉に仕事に打ち込めば当然ながら出世のチャンスは広がる一方で、ストレスが蓄積して体を壊し、寿命は縮む──そんな気がしてしまうのは、「気楽な生き方のほうが長生きできる」というイメージが浸透しているからだ。
ターマン・フリードマンの研究はこれを覆した。
「調査対象者のうち、30代後半までに職業的に成功したと判定された5分の1と、最も不成功な状態にあると判定された5分の1を選び出し、その後の寿命を比較すると、成功した人たちの寿命が5年も長かった。
成功を収めた人たちのほうが勤勉な傾向が見られましたし、仕事に打ち込むなかで大きなストレスを受けても寿命を縮めることにはならなかった。逆に〈勝負から降りた人〉は長寿ではありませんでした」(岡田氏)
つまり、「ストレスが長生きを妨げる」とは単純には言えないのだ。
◆「計画的」か「無理をしがち」か
11年間にわたってカナダで行なわれた別の研究では30歳から69歳の男女について調査開始時の職業とその後の死亡率の関係を調べた。すると、〈仕事をしていなかった人〉の死亡リスクが男性で37%、女性で27%も上昇していたことが明らかになった。
「責任感や向上心を持って仕事にあたると、ある程度ストレスがあっても寿命に対してプラスに働くと解釈できます。
大事なのは、自分のペースを保てるかどうかです。残業一つとってもオーバーペースになれば余裕はなくなり生産性は落ちる。長生きするには働きすぎる自己犠牲の真面目さではなくきっちり休んでパフォーマンスを維持するような洗練された真面目さが求められる」(同前)
※週刊ポスト2017年2月24日号