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子供への性犯罪被害 語られざる「負の連鎖」

「A君を殺めたXは許されないが、Xも被害者であり、その事件が闇に葬られていたのだと後に知ることになった。こんなに悲しいことがあるのか。A君がなぜ殺されなければならなかったのかは、Xが過去にうけた被害の影響も知る必要があると考えて、真相究明のために警察を問い詰めたり、地元新聞社に掛け合ったりする人もいました。でも、誰も何もしてくれなかった」

 一昨年に関東地方で起きた、女性殺害事件の被疑者として逮捕された成人男性Yの同級生も、Yの過去について次のように証言している。

「明るかったYは、中学時代に男性教師に性的暴行を受けたあと、人が変わったようになりました。特に女性に対して暴力的になった。Yがやったことは許されませんが、男性教師による暴行がなければ、Yはこんなことをしなかったはず」

 話を元に戻そう。

 今回逮捕された男児ポルノ愛好者に被害を受けた男児らの多くは小学生で、一般的に考えれば、初めての性衝動に駆られる以前の状態であることが推察される。このことが、被害児童達が成長したとき、どう影響するのか。

 自身でも戸惑うほどの性衝動を初めて覚えたとき、想起するのが幼少期に自身の体を弄んだ卑劣な男達だとしたら、そこに恐怖と怒り、戸惑いが生まれるだろう。そのとき、果たして彼らは性衝動を普通のこととして受け入れられるだろうか? 性衝動を必要以上に嫌悪し、そのすべてを否定するため強い破壊衝動に駆られるのではないか。

 卑劣な連中に性的な屈辱を受けたその記憶は、分別がつく年齢になり、かつては屈辱だと思わなかった被害の意味を理解するようになる。自力でその苦しみを乗り越えられる者もいるだろうが、そのような解釈は、第三者によるあまりにも都合がよい展開だ。

 消し去りたい記憶に悩まされ続け、それへの対処法を得られないまま思春期を過ごした子どもたちは、一見、普通の生活を送る普通の子のふりをする。だが、苦しみを忘れたわけでも克服したわけでもない。ここまでは少年を例に挙げてきたが、少女の被害者も同様の絶望を味わう。そして、少女の怒りの矛先は、多くがみずからを貶めることへ向かうことも、取材によって裏付けられる。

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