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子供への性犯罪被害 語られざる「負の連鎖」

 地方都市に住むBさんは、娘を思うあまりにとった夫婦の態度がよくなかったのではないかと、今も悔やむ。

「性的な話は一切しないと夫と約束しています。とにかく娘には、あの忌々しい経験を忘れて欲しいと願った。私たち夫婦がとった態度は娘を思おうがあまりのことだったけれど、彼女にとって、それは単なるよそよそしさに見えたのかもしれない」

 Bさんは、中学2年生になった娘が援助交際をしていたと気づいて以来、親としての責任を果たせなかったと後悔する日々を送っている。娘は、小学校低学年時に近隣高校に通う男子生徒から性的ないたずらを受けた。Bさん夫婦は当初「いつしか事件のことも忘れるだろう」と考えたが、補導されたときに語った娘の言葉によって初めて、内に秘めていた衝撃的な”娘の思い”と対峙せざるを得なくなった。

「”私はあの時(事件の時)から汚れていた”というのです。援助交際したところで、これ以上汚れることがないと。そんな絶望的な気持ちだったのかとショックでしたが、抱きしめるしかありませんでした」

 児童ポルノをめぐる事件が起きたとき、それはおぞましい大人が逮捕された、だけでは済まされない。児童ポルノ事件自体、生死に関わることではないと軽視する人もいるが、被害に遭った子供たちは、自分は生きる価値などないと思わされたまま生きているかもしれない。彼らのゆがみは、自分の身体を危険にさらす、他者に対しても衝動的な行動に及ぶなど弊害をもたらしやすい。その最悪の形が、かつて自分がされた卑劣な行為を、他者に対してふるってしまうことだ。

 児童虐待は連鎖するとよく言われる。それと同じように、子供への性犯罪も連鎖しているのではないか。表だって口にするのが憚られるのか、性犯罪の連鎖について世間で話題になることは少ないが、取材の場で被害者、加害者双方の事情を耳にするたび、負の連鎖は確実に存在するのだと思わずにはいられない。

 こうした負の連鎖を呼び込む可能性がある以上、我々大人が子供を見守り、卑劣な大人たちの行動に目を光らせて抑止する事が大切なのは言うまでもない。そして、被害者の心に本当の平穏が訪れるように、おぞましい記憶と向かい合って克服するための手助けを大人がしなければならない。卑劣な大人を放置したり、タブーとしてフタをするだけで終わらせるようなことは、新たな被害者だけでなく、加害者さえも作り出してしまうことになるのだから。

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