ライフ

店主兄弟のぶれない「神対応」が人気 大阪・十三の角打ち

40人は一度に立ち飲みできる広い店内では壁一面に酒のびんが並ぶ

 京都本線・神戸本線・宝塚本線という阪急電鉄の大動脈3線が合流する十三(じゅうそう)駅。西口方面には世間に知られた歓楽街が広がるが、東口は地元住民の生活と密着した活気あふれる複数の商店街がある。

 そのうちのひとつ、駅前通商店街を入るとすぐ左手に、焦げ茶色の暖簾を下げた『イマナカ酒店』が現れる。

 外観は、店の前に自販機があり、酒のP箱が積み上げられているという、どこにでもあるごく普通の酒屋さん。

「大阪に限らんと、どこの商店街にもこんな酒屋はあるだろ? 中で飲めるような感じが、まるでしない。ところが一歩入ると、店内は一度に40人は立ち飲みできるぐらいにどーんと広くなってる。それだけじゃなくて、周りの壁を埋め尽くすほどに酒が並んでて、私ら客を眺めている感じがするわけよ。これがねえ、“オペラ劇場の舞台”で飲んでるみたいで、気分がいいんだ。いやいや、そんな大層な場所に行ったことはないけどな(笑い)」(60代、建設業)

 昭和初期の創業だという店とほぼ同じ時間を歩いてきたカウンターや、昭和から平成へと進むにつれてその数を増やしてきたテーブルで、いつもの顔が、それぞれ自分がしっくりと落ち着く場所で飲んでいる。

“立ち飲みオペラ劇場”の演出担当は、3代目あたる長男から店の表舞台を任された、二男の通称、こうちゃん(今中晃平さん・54歳)と三男の通称、やすさん(康雄さん・53歳)の兄弟だ。

「私は、配達などの酒屋部門を担当していまして、立ち飲み部門は、気さくな性格のやすさんに任せているんですよ」と、兄のこうちゃんは弟を立てる。

 しかし、役割分担こそ違うが、常連客の間では、ふたりとも、人気も信頼度も、同じように高いのだ。

「多種多様のお客さんが来るからねえ。店としてはけっこう気を遣わんとあかんと思うよ。でも、やすさんの客対応がごっつええんや。はやりの言葉で言えば、『ぶれない神対応』。ちゃんと芯を持っとるし、優しいんだよ。こうちゃんも口数少なく黙々と仕事してるけど、でかい声でよう挨拶してくれる。どっちもええ男や」(80代、エンジニア)

 こんな客の声を背中で聞き流しながら、こうちゃんはすうーっと倉庫へ姿を消してしまった。そして、やすさんはというと…。

「優しいとかなんとか言われてもなあ。昔はマナーをはずすお客さんには、よう注意などしましたけどね。他の常連さんに迷惑ですから。最近は体力がなくなったせいで、そういうのやめただけですよ」と、静かに笑いながら、店内を見渡している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

4月クールに『アンチヒーロー』で主演をつとめた長谷川博己
ドラマ『アンチヒーロー』で衣装に関する“200万円請求書”騒動 長谷川博己のオリジナルコート制作費をめぐってスタイリストと制作サイドが衝突か
女性セブン
バチカンのモンテリーズィ枢機卿(左)にインタビューしたさかもと未明さん
【拉致問題解決への祈りは続く】さかもと未明さんが振り返る「横田夫妻との交流」と「バチカン枢機卿からの言葉」
NEWSポストセブン
佐賀空港を出発される愛子さま(時事通信フォト)
雅子さま「午後だけで4回もの休憩」不安視された22年ぶり佐賀訪問で初めて明かした「愛子さまとの私的な会話」
NEWSポストセブン
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司若頭だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司若頭だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
NEWSポストセブン
ドキュメンタリー映画『Screams Before Silence』でインタビューに応じるアミット(映画の公式インスタグラムより)
《55日間のハマス人質日記》囚われた女性が語る地獄の日々「生理の時期を毎日確認されて…」【音楽フェス襲撃から1年】
NEWSポストセブン
10月8日、美智子さまは「右大腿骨上部の骨折」の手術を受けられた(撮影/JMPA)
美智子さま「大腿骨の上部骨折」で手術 待ち受ける壮絶リハビリ、骨折前より歩行機能が低下する可能性も
女性セブン
結婚を発表したマイファス・Hiroと山本舞香(Instagramより)
《マイファスHiroと山本舞香ゴールイン》2人が語った結婚の決め手と夫婦像「作ったご飯を笑えるほどたくさん食べてくれる」 結婚記念日は新妻のバースデー
NEWSポストセブン
カニエ(左)とビアンカ・センソリ(右)(Getty Images)
「ほぼ丸出し」“過激ファッション”物議のビアンカ・センソリが「東京移住計画」ラッパーのカニエ・ウェストと銀座に出没、「街中ではやめてくれ」の指摘も
NEWSポストセブン
東北道・佐野サービスエリアの現在とは
《前代未聞のストライキから5年》激変した東北道・佐野SA「取り壊された店舗」名物「佐野らーめん」の現在、当時の元従業員が明かした39日間の舞台裏
NEWSポストセブン
Snow Manの渡辺翔太と向井康二
《Snow Man渡辺翔太&向井康二》“なべこじコンビ”のサウナ帰り姿をキャッチ 肩を組んだり輪になって話したり“素”の時間を満喫 
女性セブン
9月末に給料が未払いとなり、職員が一斉退職するという事態になった足立区の住宅型有料老人ホーム。千葉県内などにもある関連施設でも同じような”未払い”が発生しているという
《見捨てられた老人ホーム》東京・足立区で「人手が回らず餓死者が…」「お風呂も入れられない」給与未払いに社長は雲隠れ…元職員が明かした“現場丸投げ運営”の実態
NEWSポストセブン
田村家のお正月の風景。左・田村正和さん、右・田村亮さん
《『古畑任三郎』では今までにない自分を》俳優・田村正和さんの知られざる晩年「もうやりきった…」77才で他界した2人の兄を語る弟・田村亮
NEWSポストセブン