国内

天下りより問題なキャリア官僚の地方出向制度の憂鬱

大前氏がキャリア官僚の地方出向の問題点を提示

 何十年も前から批判されている、官僚の天下り問題。法律を制定するなど、天下りを防止する様々な方策がとられてきてが、なくならない。経営コンサルタントの大前研一氏が、天下りだけでなく、キャリア官僚の地方出向について本当の問題点を解説する。

 * * *
 国家公務員法に違反した文部科学省の組織的な「天下り」斡旋問題で、同省の歴代次官や人事課長が“総懺悔”している。だが、これは文字通り氷山の一角だろう。各省庁による水面下での組織的な天下り斡旋は日常茶飯であり、内閣府の再就職等監視委員会の調査で簡単に違反が明るみに出た文科省は脇が甘かっただけだと思う。

 私は「ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学」などで世界中どこへ行っても通用するグローバル人材の育成に力を入れ、文科省もそういう教育改革を急げと訴えてきた。しかし、当の文科官僚が自分で再就職先も見つけられないという体たらくなのだから、グローバル人材育成の指導監督など望むべくもない。

 キャリア官僚の能力や見識を民間で活用すべきだという意見もあるが、それは彼らが20代当時の学力評価であって、21世紀の世の中を生きていく能力ではない。もし彼らがそれほど高い能力や見識を持っているのであれば、なおさら再就職先を自分で見つけることくらいは容易なはずである。それが難しいということは、官僚OBを積極的に雇いたいと考える民間企業は非常に少ないということだ。

 その上で、誤解を恐れずに言えば、今回の文科省の問題は、地方自治体も含めた国全体の人事制度の構図から見ると、大したことではないと思う。より大きな問題は、霞が関のキャリア官僚の地方自治体への「出向制度」にある。キャリア官僚は30歳前後から地方自治体の課長、部長、局長、助役、副知事などに出向し、国と地方を行ったり来たりする。

 総務省の資料によると、国から地方自治体への出向者数は1600~1700人。つまり、都道府県や市町村の役所には、それだけの数のポジションが、中央省庁から出向してくるキャリア官僚のために用意されているわけだ。これは中央から地方への出向という形の“一時的な天下り”にほかならない。

関連記事

トピックス

公明党が不信感を募らせる背景には岸田首相の“二股”も原因(時事通信フォト)
【自公25年目の熟年離婚へ】日本維新の会と“二股”をする岸田首相への怒り 国会最終盤で公明党による“岸田降ろし”が勃発か
週刊ポスト
大谷が購入した豪邸(ロサンゼルス・タイムス電子版より)
大谷翔平がロスに12億円豪邸を購入、25億円別荘に続く大きな買い物も「意外と堅実」「家族思い」と好感度アップ 水原騒動後の“変化”も影響
NEWSポストセブン
杉咲花
【全文公開】杉咲花、『アンメット』で共演中の若葉竜也と熱愛 自宅から“時差出勤”、現場以外で会っていることは「公然の秘密」
女性セブン
被害者の渡邉華蓮さん
【関西外大女子大生刺殺】お嬢様学校に通った被害者「目が大きくてめんこい子」「成績は常にクラス1位か2位」突然の訃報に悲しみ広がる地元
NEWSポストセブン
京急蒲田駅が「京急蒲タコハイ駅」に
『京急蒲タコハイ駅』にNPO法人が「公共性を完全に無視」と抗議 サントリーは「真摯に受け止め対応」と装飾撤去を認めて駅広告を縮小
NEWSポストセブン
阿部慎之助・監督は原辰徳・前監督と何が違う?(右写真=時事通信フォト)
広岡達朗氏が巨人・阿部監督にエール「まだ1年坊主だが、原よりは数段いいよ」 正捕手復帰の小林誠司について「もっと上手に教えたらもっと結果が出る」
週刊ポスト
イラン大統領「ヘリ墜落死」を佐藤優氏が分析 早々に事故と処理したイラン政府の“手際のよさ”の裏で密かに進む「国家の報復」
イラン大統領「ヘリ墜落死」を佐藤優氏が分析 早々に事故と処理したイラン政府の“手際のよさ”の裏で密かに進む「国家の報復」
週刊ポスト
家族で食事を楽しんだ石原良純
石原良純「超高級イタリアン」で華麗なる一族ディナー「叩いてもホコリが出ない」視聴率男が貫く家族愛
女性セブン
快進撃が続く大の里(時事通信フォト)
《史上最速Vへ》大の里、来場所で“特例の大関獲り”の可能性 「三役で3場所33勝」は満たさずも、“3場所前は平幕”で昇進した照ノ富士の前例あり
週刊ポスト
杉咲花と若葉竜也に熱愛が発覚
【初ロマンススクープ】杉咲花が若葉竜也と交際!自宅でお泊り 『アンメット』での共演を機に距離縮まる
女性セブン
中条きよし氏(右)のYouTubeチャンネル制作費は税金から…(時事通信フォト)
維新・中条きよし参院議員、公式YouTube動画制作に税金から500万円支出 チャンネルでは「ネコと戯れるだけの動画」も
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売!「官房機密費」爆弾証言スクープほか
「週刊ポスト」本日発売!「官房機密費」爆弾証言スクープほか
NEWSポストセブン