また、脳の底にある腫瘍に対しては、頭に孔を開けるのではなく、鼻や口からアプローチして内視鏡を挿入するといった発想の転換で、より低侵襲な手術を行なうことが可能となった。
「脳の底の腫瘍に対する顕微鏡手術だと、トンネルの入口から覗き、トンネルの出口の向こう側を治療するようなもので、重要な血管や神経が死角で見えないなどの問題もあります。そのため特殊なナビゲーションシステム等を用いながら、周囲の血管や神経の存在を確認しつつ手術を行なっていました。神経内視鏡手術は、トンネルの出口にあたる患部近くまでカメラが入るので、見えなかった大切な血管や神経を確認しながらの手術ができます」(喜多村教授)
昨年、脳出血に対する神経内視鏡手術が保険承認された。他にも脊髄の疾患に関しても内視鏡による治療を行なうなど、疾患の対象がいよいよ広がっている。
神経内視鏡手術は、学会が指定する2日間の研修を受けた脳外科医を専門医として認定している。全国で約750人が専門医の認定を受けている。今後、より高度な専門性と上級技術認定として、2018年度までにエキスパート認定制度が設立される予定だ。
●取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2017年3月17日号