◆医者の家に生まれた人じゃないからわかんない
お葬式が終わると、妹はわがもの顔で実家に入りびたりました。生前、折り合いが悪かった父がいなくなって、気が楽になっただけではありません。妹は、私の子供の進学にまで口を出し始めました。先夫の息子は近所の公立小学校に通っているのに、「お父さんが違う」といじめにあうかもしれないから、などと言って、私立へ転校させろと言うのです。
夫は「小学校は公立」という考えだから、妹の提案を受ける気はありません。すると、「医者の家に生まれた人じゃないからわかんないわよね」とイヤミたっぷり。夫と妹は何度もぶつかり、そのたびに夫の味方をする私と妹がぶつかる。
そんな親のいざこざとは関係なく、長男は望んで公立小学校から私立の中、高へ通い、K大学の医学部に進学しました。長女は中、高は私立校に通い、G大学へ。
今の夫の息子は、私立の中学受験に失敗し、地元の公立中学から都立高校に行ってJ大学へ進学しました。
◆やましさから甥の進路を心配する叔母のふり
皮肉なもので、あれほどうちの子供たちを「私立、私立」と騒ぎ立てていた妹なのに、自分の2人の息子は、県下一の進学高校から、国立のH大学とT大学へ入れたのです。
妹は、「姉さんのところは教育費をかけられるからいいわよ。うちは貧乏だけど子供たちはみんな親孝行。女ひとりでがんばってきたからかしら」と、私の気持ちをさかなでします。
妹が「女手ひとつ」というのは本当かもしれませんが、「うちは貧乏」というのは大うそ。交通事故で亡くなった夫の保険金が下りたのは当然ですが、父が診療所として使っていたところを裁判をしてまで取りあげ、売り払ったのです。
しかも父が亡くなった翌年に。妹が原告で私が被告。敵なら敵でいいんです。ところが妹は、裁判を起こしてまで診療所を売らせたやましさから、「私立、私立」と、さも自分は甥の進路を心配しているようなふりをする。それで、最後に出てくるのは、過去の恨みつらみ。「私のお母さんを、姉さんが叩き出した」です。
もうたくさん。下の息子が大学受験のさなか、私は妹に、「二度と家に来ないで」と最後通告をしました。その夜、私にとって人生最大の悲しみが忍び寄っていたとは知らず、下の息子はジュースで、私はビールで、妹を追い出したことを喜び、祝杯をあげたのです。