◆「徴用=強制連行」は誤り
「韓国映画界の若手実力派、柳昇完監督指揮の下、総製作費200億ウォン(約20億円)をかけ、トップクラスの俳優を複数起用した『軍艦島』は、今年最大の話題作として注目を集めています。観客動員数が1000万人を超えることはまず間違いない」(韓国の映画ライター)という。
単純計算で韓国国民の5人に1人が観るであろうこの作品。公開前から「史実に基づいた映画」として喧伝されているが、プロパガンダ映画といっていいほど事実が歪められている。
まず、映画では軍艦島で働く朝鮮人が日本によって強制連行された人々として描かれているが事実に反する。
「国家総動員法」に基づき1939年に制定された「国民徴用令」は、戦時下の労働力を確保するため、朝鮮半島出身者に限らず日本国民すべてを徴用の対象とした。銃剣を突きつけ連行するようなやり方ではなく、「白紙」と呼ばれる令状による召集だ。なお、朝鮮人に徴用令が適用されたのは1944年9月である。それまでは「募集」と「官斡旋」が主体であり、日本の官憲が朝鮮人を連行することはあり得なかった。
過去に複数の元朝鮮人労働者から聞き取り調査を行った、東亜大学教授・崔吉城氏が解説する。
「朝鮮人労働者が日本に来るパターンは二つ。出稼ぎと徴用です。前者は朝鮮半島で生活に困窮した人が自発的に日本へ渡ったケースで、炭坑などに派遣され仕事をしていました。一方、大戦末期に行われた徴用の際も、朝鮮人労働者は数年間の契約を結び日本に渡ってきた。徴用を『強制連行』とするのは誤りです。
また映画では朝鮮人労働者の“待遇差別”が描かれているようですが、多くの元朝鮮人労働者が『賃金などの差別的待遇はなかった』と証言しています。賃金に差が生じたとすれば経験や職能によるもので、元朝鮮人労働者たちは技術を持つ日本人労働者が高給を得ることを、むしろ当然と考えていました」
※SAPIO2017年4月号