長尾:現実のほうが全然面白いということですね。でも、小説を書かないで、これからの人生をどのように過ごすのですか?
筒井:ニュースを見て過ごすの(笑い)。
長尾:我慢できますか。
筒井:いや、もう、ほとんど書き尽くしました。『モナドの領域』を書いたときに、「ああ、これで終わりだな」と思いましたからね。あれに全部ぶち込んでますから、今までのすべてを。
デビューした初期の頃から、ドタバタのスラップスティックの、しかもサイエンスフィクションを書いてきて、「ラテン系の作家は日本では筒井さんだけ」といわれました。「すべてのことを面白がって笑いにしてしまう」と。しかし歳を取ると不思議なもので、体が動かなくなってくると、ドタバタが書けなくなるんです。
長尾:描写がしんどくなる。
筒井:そうなんですよ。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号