戴社長になって、社外取締役にソニーの役員経験者が選任されていることからも、ソニーとの浅からぬ関係が読み取れる。私は戴氏に「シャープの社長に内定してから、もしくは就任してから最初にしたことは何ですか」と尋ねた。必ず新社長に最初にする質問である。戴氏は、こう答えた。
「私が社長に就任したのは八月十三日ですから、すぐに(役員は)夏季休暇に入ってしまいます。そこで二十一日発表予定の経営基本方針をまとめるため、すぐに役員や幹部に聴き取りを始めました。それが最初に私がしたことです」
約一週間で「経営基本方針」を策定するスピードは、いまの日本企業ではとても考えられない。さらに発表後、戴社長は矢継ぎ早に行動に移している。とくに留意すべきは、次の二点である。
ひとつは、社員に直接呼びかける「社長メッセージ」を節目節目で発信し、新社長が何を考え、社員に何を求めているかを正確に伝えようとしたことである。もうひとつは、徹底した本社のスリム化である。
第一回の社長メッセージは経営基本方針が発表された翌二十二日に発信された。タイトルは『早期黒字化を実現し、輝けるグローバルブランドを目指す』である。