ビジネス

シャープ新社長・鴻海出身の載正呉氏が「最初にしたこと」

鴻海出身・戴正呉社長の実力は(写真/時事通信フォト)

「下請けとしていいように使われて終わり」──台湾の鴻海精密工業の傘下に入ったシャープの行く末を、多くのメディアはこう予想した。しかし、同社は2017年3月期の業績が大幅に改善する見通しで、東証一部への復帰も間近と見られる。このV字回復を主導したのが、親会社となった鴻海から送り込まれた戴正呉社長だ。果たしてシャープは本当に「再建」されるのか。家電業界を長年取材する立石泰則氏がレポートする。

 * * *
 経営難に陥ったシャープが本社の土地建物を売却して、大阪市から堺市へ本社を移転させたのは、昨年の七月のことである。その三カ月前には、自主再建を断念し、台湾の鴻海精密工業(以下、鴻海)へ「身売り」する決断をしていた。

 新しい本社へのアクセスは、JR大阪駅を起点にするなら、最寄りの市営地下鉄御堂筋線「梅田」駅から「大国町」駅まで乗車し四つ橋線に乗り換えて「住之江公園」駅まで約二十八分、そこから南海バスに十数分揺られて終点の「匠町」のバス停に着く。

 しかしそこは、太陽電池工場や液晶パネル工場などが集まる「グリーンフロント堺」のゲート付近に過ぎない。ゲート入り口で受付を済ませ、シャープ本社まで一直線に続く舗装された歩道を十数分歩いてようやく敷地の端に辿り着く。

「シャープ株式会社」のプレートがなければ、おそらく私は、外見からだけでは他の工場棟と見分けられなかっただろう。

 正面玄関に立つと、海のすぐ傍のせいか、ほのかに潮の香りがした。企業取材を始めて四十年近くになるが、初めての経験だった。

「液晶のシャープ」の名をほしいままにし、世界の液晶テレビ市場を牽引してきたかつての勢いは、もはや感じられなかった。

 数千億円の最終赤字を計上したとか、債務超過に陥るといった数字上の「経営危機」を頭で理解してきた私にとって、目の前のシャープ本社の姿は「会社の経営がダメになるということは、こういうことなのだ」と改めて実感させられた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン