大切な人を亡くした時のショックは大きく、悲しみは深い。とりわけ、東日本大震災のような大災害での別れはあまりにも唐突だ。遺族はその死を受け入れることができずにいる場合も多い。

「そんな遺族たちにとって、霊体験は一種の救いになっている。家族の霊を“怖い”と感じる人はおらず、むしろ霊に出会うことで親しい人が亡くなったという事実と向き合い、折り合いをつけられるようになった人が多いのです」(奥野氏)

 このような体験は、東日本大震災の被災者に限ったことではない。

 終末期医療の現場に立つ医師たちがよく目にするというのが「お迎え現象」である。病床にある患者の夢枕に、すでに亡くなった親しい人が立ち、“あの世から手を引く”という現象だ。『看取りの医者』の著者で、630例を超える看取りを行なってきた平野国美医師はこう語る。

「私の実感としては看取った患者さんの3~4割が“お迎え”を体験しています。体験した人は、親や連れ合いなど親しい人が出てくるので、死をそれほど恐れなくなる。『あの人に会えるんだから、早く向こうに行きたい』と言い出す人さえいます」

 平野氏が看取った85歳の女性は、夫に先立たれた後に鬱病を患っていた。彼女は死期が近づくにつれ、こう話すようになったという。

「昨日、お父ちゃんがきて『こっちはいいよ』っていうの。お父ちゃんがそういうのなら、あっちいくのも悪くないわね」

 夫との不思議な邂逅が心理的な安らぎをもたらしたのか、女性は穏やかな表情で旅立ったという。

※週刊ポスト2017年4月7日号

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