難聴を改善するにはどうすべきか。〈テレビの音量を上げないと聞こえない〉といったように、耳の中で音が小さくなってしまう「伝音難聴」はほとんどの場合、それぞれの疾患に合わせた投薬治療や手術で聴力が回復する。
例えば耳垢栓塞の場合には、耳の中を傷付けるのを避けるため医師が専用の器具を使って耳垢を取り除く。ただし、「耳かき」は予防には効果的だが注意が必要だ。
「つい耳の奥までやりすぎてしまうと、外耳道炎や細菌感染を招いて音の通り道を塞ぎ、かえって聞こえにくくなってしまう。耳掃除は週1回程度、湿らせた綿棒で耳の穴から1cm程度をそっとぬぐえば十分です」(笠井耳鼻咽喉科クリニックの笠井創院長)
加齢性難聴や突発性難聴などの「感音難聴」は治療が困難なため、「補聴器」を利用することになる。補聴器には主に「耳穴型」「耳かけ型」「ポケット型」の3タイプある。
「『耳かけ型』は小型化が進みましたが十分なパワーがあり、どんな難聴にも対応できる。『耳穴型』はサイズが小さくて目立たないが、出力が弱く、中程度の難聴までしか対応できないものが多い。『ポケット型』は性能が劣るが、比較的安価というメリットがあります」(リオネットセンター大宮店の認定補聴器技能者・福澤理氏)
難聴を予防する手立てはあるのか。前出・新田医師は「難聴予防には2つの方法がある」と指摘する。
「『大きな音』を聞く機会が多い人は、その刺激で有毛細胞が破壊されて難聴になる可能性が高い。音楽を聞くときには、音量の上げすぎには気をつけてほしい」
イヤホンなどで音楽などを聴く場合は、ボリュームを最大音量の60%程度に抑えて、1時間以上連続して聴かないようにするのが目安だ。
もうひとつの危険因子は「動脈硬化」である。
「動脈硬化により血流が悪化すると、耳の神経細胞への栄養供給が滞るため、難聴を引き起こすとされます。日頃から栄養バランスや運動に気を配り、生活習慣病を防ぐことが難聴の予防にもつながります」(同前)
難聴になると、気が滅入ってしまい人との交流が減り、うつや認知症を患うこともある。「よく聞こえる暮らし」を目指すことが、「よい生活」の第一歩だ。
※週刊ポスト2017年4月7日号