ところが、業界や関係者についてどう思っているかと聞かれると、反応がガラリと変わる。顔を上げて座り直し、背筋を少しだけ伸ばして声を震わせ、鼻を拭き「うちがこけたらどうなるかという恐怖があった」と話したのだ。そして「本当にすまなかった」と上半身をわずかに前に倒し、頭を深々と下げた。被害者への謝罪の仕方より、心持ち丁寧な感じがする。
会見を見ていると、山田社長が真っ先に謝罪したいのは付き合いの長い取引先や業界関係者であり、顔の知らない、顔の見えない被害者は二の次になっている印象が拭えない。
国際航空運送協会(IATA)への約4億円の支払いが滞ったのは23日。当日まで払えると思ったのかと聞かれ、一瞬口ごもった。「経営がいつから苦しくなったのか」という質問に言葉を濁し、「一昨年の春」と小さな声でもごもご言った。「それまでは黒字だったのか」と問われると、目をギュッとつぶって「数字はいろいろ出て…」と答えなかった。
「このような結果をまねいて」と言った時も、山田社長はギュッと目をつぶった。見たくないこと、目の前から消し去りたいことには、これまでも目をつぶってきたに違いない。
すでに3年前から粉飾決済を続け、去年までに約75億円の債務超過があったという「てるみくらぶ」。「生きることしか考えていなかった」「なんとか守らねば」と語ったのは山田社長の本音だろう。なんとか金を集め、どうにか資金繰りをして会社を守る。社長の言葉を裏返せば、方法もモラルも顧客の損も考えてはいられない、ということか。
「現金一括でキャッシュを集めたのでは?」と聞かれ、「考えたこともございません」と言い切り、「自転車操業だったのでは?」の問いに「そういう風には思っていなかった」と答えた。だが、「詐欺じゃないか?」と言われると身体が微かに前後に揺れた。「そんなことは毛頭思っていない」と否定しながら、心の中ではこういう結果になる可能性に気づきながらも、それを否定し続けてきたということだろう。
「私の不徳に致すところ」とお詫びしながら頭を下げた時は、ほとんど涙声。申し込んだ客たちは泣くに泣けない状況なのに、山田社長は身体を震わせ、顔を伏せて泣いていた(ように見えた)。
だが会見終了間際の一瞬、弁護士を見上げたその目は赤くも、濡れてもいなかった。うーん、どおりで山田社長の目元のメイクが崩れなかったわけだ。