「ONK座談会」2002年開催時(撮影/山崎力夫)
「ミスタープロ野球」長嶋茂雄さんが亡くなった。ミスターが、通算868本塁打の世界記録を持つ王貞治氏、史上最多の通算400勝をあげた“カネやん”こと金田正一氏との3人で丁々発止のやり取りを繰り広げてきた週刊ポストの新年号名物企画が『名球会ONK座談会』だ。長嶋さんを偲んで、当時の誌面を再録する。
座談会の会場は銀座の高級フグ料亭。向かって左からミスター、カネやん、王氏と並ぶ。
カネやんがフグの湯引きをどんぶり鉢に山盛りにして掻き込み、王氏は食事よりヒレ酒が進む。そしてミスターはてっさ(ふぐ刺し)が大好物。大皿に並ぶ分厚いてっさを箸で掻き集め、一気に口の中に放り込む。大皿から全部さらってしまいそれをカネやんが咎めることも。モグモグと食べ続けるから話ができない。一通り食べ終えてミスターとカネやんが顔を見合わせ、“うまいな”と言ったところからようやく座談会が始まる。それまで記者の質問に答えるのはほとんど王氏だけだ。
ただ、3人の話が始まればオフレコは一切なし。歯に衣着せぬやり取りが繰り広げられた。
●1985年/王監督1年目の巨人の3位低迷を受け…
金田:ワシら名球会のメンバーは監督をやると、心配なのが成績ね。ヘタに失敗されると、名選手名監督にあらずといわれる。
長嶋:その点、中日の山内(一弘)監督とロッテの稲尾(和久)監督はよく頑張ったよね。
金田:稲尾はよくピッチャーを立て直した。ただ、長嶋や王が監督になった場合、すぐに優勝せんかったらワンワンやられる。一年生監督で3位だったら、一応よしとしなければいけないところやが、そうはならない。古葉(竹識)や上田(利治)たちは4年でも5年でも待ってもらえる。
王:辛いですなァ。ただ、はっきりいってボクは張り切っていましたよ。たとえば、監督会議にいったって、オレは巨人だから負けちゃいられない、と。一年生監督だからといって、引かなかったんですよ。
長嶋:いろんな体験、試練を受け、一番悔しかったことある? あるいは我慢できなかったこととか?
王:我慢できなかったのは、前半の30試合が、まさにその連続でしたよね。ドーンと落ち込んじゃった。
肩を落とす王氏をミスターは「とにかくワンちゃん、1985年は頑張ってファンにアピールする野球を見せてよ!」と鼓舞した。