芸能

片岡鶴太郎 『座頭市』出演で勝新太郎から学んだこと

俳優業について語る片岡鶴太郎

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、モノマネで知られるお笑い芸人として売れっ子になった片岡鶴太郎が、大林宣彦監督作品で映画に初出演したときのことを語った言葉をお届けする。

 * * *
 片岡鶴太郎は1988年に山田太一原作・大林宣彦監督の映画『異人たちとの夏』に出演、俳優としての評価を高めていく。

「市川森一さんの書かれたホン(脚本)を読んだら面白い役だと思いました。この役は俺しかできないという直感があったんです。下町の寄席好きの親父。まさに私の父親でしたから、父親をモチーフにしよう、と。

 でも、実を言うと降りたいと思っていました。その時、ボクシングのプロライセンスの試験が六月に決まっていました。で、映画は四月にインする。この四月はボクシングに集中したくて、できるだけ仕事したくなかった。

 それで監督に『この四月は実戦のスパーリングで打ち合わないといけない。ですから、鼻血が出たり傷を作ります』と言ったんですよ。これで降ろしてもらえると思った。ところが監督は『ああ、そう?』って。

『鶴ちゃん、それはやるべきだ。山田さんは脂性の鶴ちゃんは寿司職人にミスキャストだから変えてほしいと言ってたけど、今はボクシングをしてるからランニングの似合う身体になっている。それに僕は役者の顔を撮るんじゃない。顔が欲しくて鶴ちゃんを選んだんじゃない。鶴ちゃんにこれをやってもらいたいんだ。どんどん打ち合って構わない。傷ができたら、背中から撮るから』っておっしゃる。それで、僕も決心を固めました。

 初めての映画でしかも大役ですから、本当はプレッシャーがあるはずなんでしょうけど、スパーリングの後で撮影でしたから。『殺されるんじゃないか』『今日も生き延びた』という放心状態のまま現場に行ってたので、何も怖く感じませんでした。力が抜けて、芝居をしようという気がなかったのが、かえってよかったのかもしれません」

 翌年には勝新太郎監督・主演の映画『座頭市』に出演した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン