勉強から遠く離れていたが、再び学ぼうと、大学の門を叩く人が増えている。「大学で勉強」といっても、過酷な受験勉強や多額の受験料、入学金が必要なわけではない。もっと気軽に、たくさんある講座の中から好きなものや興味のあるものを選び、受講することができる「公開講座」や「科目聴講生」などの制度がある。
ほとんどの講座は有料だが、テレビに出るような有名教授から直接講義を受けられたり、広い図書館や学食が利用できたりという“特典”は無料のカルチャースクールや地方自治体が行う講座に優るようで、多くの人が通っている。
中里裕子さん(54才・仮名)は、4年前から夫と一緒に東洋大学(東京・文京区)の講座を受けている。
「新聞の折り込みチラシでふと目にしたのがきっかけでした。5回分で4000円ぐらいだったから、映画やお芝居に行くよりよっぽどお得だな、と思ったんです。目に留まった講義を夫と相談しながら決めて、肩を並べて受けています。夫とは大学を出てから出会ったから、もし同級生だったらこんな感じだったのかしら…なんて想像しながら(笑い)。
夫は仕事があるので平日は無理なんです。土曜日にやっていて、朝イチの講義で…と選んでいくとインド哲学になっちゃったこともありましたよ。でも先生の説明がうまいからどんな授業も退屈しないんです」
講義が終わると、ふたりで学食へ。
「450円でサラダとデザートもついているし、おいしいんです。私たちの頃は、こんなにおしゃれなメニューってなかった。カレーとかうどんとか、味だってこんなにおいしくなかったなあって。今の学生さんはいいなあ、なんて思います。試験とレポートさえなければ、勉強ってこんなに楽しいんだってわかりました。帰りは広くてきれいな図書館に立ち寄って、構内を散歩して帰る。これは町中のカルチャースクールにはない楽しみです」
一方で「なかなか踏み込めない」とため息をつく同世代もいる。森田洋子さん(52才・仮名)もその1人だ。