お墓参りに行きたくても遠いし、時間がかかる。あるいは、子供に迷惑をかけたくない…そんな悩める人たちから注目を集めているのが自動搬送式の「室内墓」だ。首都圏を中心に増え続けている室内墓とはどんなものなのか。ノンフィクションライターの井上理津子さんが、室内墓の「今」に迫る。
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室内墓はおしなべてモダンな建物で、「宗派不問」なのも特徴だ。「動くお墓」といわれるはずである。館内には、利用者が見えない場所にコンピューター制御の保管庫が備えられ、多数の納骨箱(厨子(ずし)と呼ばれる)が収納されている。参拝者が専用のICカードを所定の位置にかざすと、保管庫から納骨箱が参拝ブースまで自動的に運ばれてきて、墓石にセットされる──。
首都圏に今、約30か所(12万~15万基)まで急増している、そんな自動搬送式の室内墓のうち、今回は最新のところを訪ねた。
キョウチクトウやヤツデなど濃淡さまざまな緑の木々が茂り、木のベンチが5つ配されたテラス。訪れた3月中旬の昼下がりは、そよ吹く風が気持ちよく、白い花をつけたユキヤナギから甘い香りがほのかに漂ってきた。
墓石は、台の上に置くスタイルではなく、足元から続くフルサイズだ。和型(昔からのお墓の形)と洋型(横長形)の両方を兼ね備えた、大きな“デザイン墓”。しかも、赤みがかったレンガ色というか、落ち着いた紅色というか。ともかく赤い墓石である。
ここは、東京ドームにほど近い住宅街に建つ『小石川墓陵』の4階。「こんにゃくえんま」で知られ、400年の歴史を持つ浄土宗の源覚寺が経営する、最新型の自動搬送式のお墓だ。
1階ロビーにはソフトバンクのロボットがいて「こんにちは、ボクは小石川墓陵のスタッフをしていますペッパーです…あなた、さっきボクのこと見てましたね」と発した。「お子さん連れでお参りに来られるかたもいらっしゃるので、退屈しないようにロボットを入れました」と、ここ小石川墓陵の販売代行を手がける株式会社はせがわ小石川営業所所長の柴田敦さんの言葉に、「すごいな」と思ったが、エレベーターを4階で降りると、さらに驚かされた。テラスと墓石に目を見張ったのだ。
テラスにしばし身を置いた後、一点の曇りもないガラスドアを開ける。
御影石を敷き詰めた3畳ほどの参拝スペースが広がっている。一部に木の立て格子も設えられていて、「和」のテーストもある。所定の位置にICカードをかざすと、正面の扉がゆっくりと開き、件の赤い立派な墓石が現れた。背後の壁は黄金色で、間接照明が目に優しい。生花が供えられ、お焼香できる「電子香炉」も組み込まれている。