お墓参りに行きたくても遠いし、時間がかかる。あるいは、子供に迷惑をかけたくない…そんな悩める人たちから今、注目を集めている自動搬送式の室内墓。誕生から十余年、驚くべきスピードで首都圏を中心に増え続けている。いまだ違和感を持つ人も多いそれは、今後ますます大きな潮流となるのだろうか。
百聞は一見に如かず…ノンフィクションライターの井上理津子さんが、東京ドームにほど近い住宅外に建つ「小石川墓陵」の4階、「こんにゃくえんま」で知られる浄土宗の源覚寺の自動搬送式の室内墓を取材した。
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墓石の前に立つと、目の高さの位置に、利用者の家名などを刻字した厨子(ずし)がセットされる。参拝スペースも、供花もお香も、他の利用者と共有だが、その中にいる間は「うちのお墓」となる。
この仕組みは、従来の自動搬送式と同じだが、外の日差しが入り込み、何しろ明るい。私の目には「屋根のある外墓」と映った。室内の最新型が「外」に向かっているとは、皮肉なめぐり合わせだな…。
最新といえば、壁面に設置された液晶画面もだ。「固定の写真だけでなく、スライドや動画も入ります」と株式会社はせがわ小石川営業所所長の柴田敦さん。ダミーを見せてもらうと、故人の思い出の写真の数々のほか、外墓に徐々に近づいていきアップになるように見えるスライドも入っていた。柴田さんはこう語る。
「改葬のかたには、それまでの先祖代々のお墓の写真を入れませんかとおすすめしています。“あのお墓から、このお墓につながって今があるんだね”という感覚を持てると好評です」
この液晶画面には、閉じる前に「○○さんの○回忌は、×年×月です」などと回忌の予定年月が表示された。至れり尽くせりだ。締めて、おいくらか?
一律90万円。外墓を買うよりも明らかに安い。参拝スペースは、テラスつきの4階のほか、3階と2階にもあり、合計14。(2階は4階・3階の約2倍の広さで、納骨時の専用)。基数(厨子の数)は6665基。昨年10月の販売開始から5か月間で、すでに約500基が売れたそうだ。
「文京区小石川という地はブランドですから、購入するかたは決め打ちで来られます。お骨を家にお持ちのかた、改葬希望のかた、寿陵…つまり生前に買われるかた。3パターンが多いですね」(柴田さん)