芸能

19歳、渋谷でスカウトされるも夢破れたある読者モデルの現在

華やかな世界を夢見て読者モデルになったが…

 新年度が始まる春から新緑の季節は、夢に近づくための一歩を踏み出そうと何かを始める人が多いシーズンだ。一方、希望にあふれた若者の、とくに女性の憧れにつけ込み、何もかもを搾り取ることでビジネスを成り立たせている人たちがいる。かつて芸能人になりたかったある女性はいま、借金に追われ意に沿わぬ仕事を続けている。彼女がなぜ、夢破れて苦しい毎日を過ごさねばならなくなったのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 AV(アダルトビデオ)への強制出演問題や、元タレントや元アイドルといった肩書きの女性たちがAVに出演しニュースになるなど、女性と性産業に関する話題が尽きない。もちろん、後者に関しては本人の同意や意思によるものだろうから、問題視する声は聞かれない。ただし、元タレントや元アイドルがAVに出演することが半ば”当たり前”のようになってくると、そこに別の弊害も生まれているようだ。

 越田仁美さん(仮名)は現在24歳。幼い頃から芸能人になる夢を持ち、地元・関西では、フリーペーパーの読者モデルを務めた実績もある。転機が訪れたのは友人らとの旅行で訪れた渋谷で、編集者にスカウトされたことだった。慎重な性格の仁美さんは、写真は撮らせたものの、自身の住所や連絡先を編集者に教えることはなかった。

「新創刊される雑誌のファッションスナップだということで声をかけられました。怪しさもありましたが、見覚えのある読者モデルがそばに立っていて、あの子も新雑誌でモデルをやるんだと説明されて…」

 二カ月後に新創刊された雑誌「X」に自身のスナップが本当に掲載されているのを知り喜んだ仁美さんだが、同時に後悔もした。あの時積極的に自身を売り込んでおけば、もっと夢に近づけていたのではないか…。

「X編集部にお礼の手紙を送り、雑誌の専属モデルになりたいと写真や経歴書を送りました。Xのプロデューサーを名乗る男から電話がかかってきたのは、手紙を出してからほんの二~三日後だったと思います」

 雑誌Xのプロデューサーを自称するYは、開口一番「君は一次審査を通過した」と告げ、二次面接のために東京に来るよう勧めたという。

「19歳だったので、私が未成年だということで母親の同伴もYは求めてきました。母親は怪しんでいましたが、実際に販売までされている雑誌ということで、最終的には理解してくれたのです」

 Yによる二次面接は、都内のカフェでおよそ一時間にわたって行われた。お母さんは心配かもしれないが私に任せて欲しい、私は芸能界にも太いパイプがある…そして最後に事務所登録時にかかる費用についてYは説明を始めた。

「宣伝写真の撮影料や登録料など、全部で12万くらいかかると説明されました。母は、お金がかかるなんておかしいと言いましたが、写真代だししかたがないと感じて…」

 登録するために撮影などでお金がかかるという説明は、悪徳な芸能事務所が使ういつもの手口に過ぎない。まともな芸能事務所は、契約した人に金と手間をかけ育て上げ、メディアに露出させることでビジネスとして成立させる。金を出すべきはどんな場合でも事務所側であり、所属タレントやモデル側が金を出す理由は一つもないのだ。訝しむ母の表情を察したのだろうか、Yは次のような提案を持ちかけてきたという。

「Yは“慈善事業”をやってるんじゃないと、強い口調で言ったんです。私にはまだ才能の芽も出ていないし、必要な努力をしないとダメだと。実際、他の芸能事務所に履歴書を送っても落とされていたので、Yのいうことは信憑性があると感じたのです」

 その後、母親をなんとか説得し50万円を借りて上京。登録費などを支払い、日中はアパレル店でのアルバイトを、夜は親に内緒でキャバクラで働いた。雑誌のスナップや、メイク特集の撮影にも何度か呼ばれたが、扱いは極めて小さいもので、事務所に所属したからといって目立った待遇の変化はなかった。ある日、Yから呼び出された仁美さんは、思い切って不満をぶつけたが、返ってきたのはYの驚くべき要求だった。

関連記事

トピックス

中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
週刊ポスト
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
「お笑い米軍基地」が挑んだ新作コント「シュウダン・ジケツ」(撮影/西野嘉憲)
沖縄のコント集団「お笑い米軍基地」が戦後80年で世に問うた新作コント「シュウダン・ジケツ」にかける思い 主宰・まーちゃんが語る「戦争にツッコミを入れないと」
NEWSポストセブン
神谷宗幣氏(写真中央)が率いる参政党は参院選で大躍進した。東京選挙区でも塩入清香氏(右)が当選(2025年8月写真撮影:小川裕夫)
《午前8時の”異変”》躍進した「参政党」、選挙中に激しい応酬のあった支持者と反対派はどこへ?参院選後の初登院の様子をレポート
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン
ブラジルの元バスケットボール選手が殺人未遂の疑いで逮捕された(SNSより、左は削除済み)
《35秒で61回殴打》ブラジル・元プロバスケ選手がエレベーターで恋人女性を絶え間なく殴り続け、顔面変形の大ケガを負わせる【防犯カメラが捉えた一部始終】
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト