いくら努力をしても覚えられない記憶力の“停滞期”を迎え、「円周率を覚えて何になるのか?」と何度もくじけそうになった。そんな時は自身をこう奮い立たせたという。
「記憶力を鍛えることでメリットはあってもデメリットはない。一日中頭を使って疲れているからか、寝つきも目覚めも良くなりました。周りからは記憶名人と呼んでもらえるようになった。何度も覚え直すうちに“記憶の道”が深くはっきりと刻まれていく、と自分を励まし続けました。そして、挑戦から8年後の54歳の時に、17時間半かけて4万桁暗唱に成功。ギネス記録を更新することができました」
退職後、円周率からルービックキューブへと勝負の“土俵”を変えた。現在は13歳年下の妻の介護と家事をしながら、空き時間を利用して鍛錬を続けている。
「記憶力向上のためには健康体でなければいけません。夜は10時に眠り、朝6時に起床。食事は1日に2食で玄米や野菜、魚を多く摂り、脳に刺激を与えるために人の3倍以上噛むようにしています。妻のリハビリもかねて毎日1時間散歩。腹式呼吸を取り入れることで、新鮮な血を脳にまでいきわたらせる。
脳には常に刺激を与えています。利き手でない方で食事をする、カラオケでは知らない曲を歌う、初めての道を通って駅に行く、普段は見ない女性用の服が飾ってあるショーウィンドウを覗くこともあります」