経済学では、企業が成長する過程で「経営と所有(資本)の分離」が進むと考えられてきた。株式公開などによって創業家の持ち株比率が下がり、世代交代を機に一族ではない専門経営者がトップにつく。
ソニー、パナソニック、東芝、シャープといった、かつて世界を席巻した“日の丸家電”メーカーは、まさにその象徴だった。
ところが、ここにきて日本では創業家の存在が見直され、創業家が経営陣の方針に物申したり、経営トップの座を創業家に“大政奉還”する企業が目立つ。
それは、歴代のサラリーマン社長による“責任不在”の経営によって危機に陥った東芝などと対照的に映る。ファミリー企業を研究する後藤俊夫・日本経済大学大学院特任教授は指摘する。
「創業家が経営を行なうファミリー企業のメリットは3つあります。1つは責任を持って経営にあたるので『リスクテイキング』ができる。企業にとって必要な対応を、決意を持って判断できるということです。2つめは、『迅速な決定』ができる。企業経営は一瞬の判断が勝敗を分ける。それが即座にできる。3つめが、『長期的な視野』に立つ判断ができる。権力基盤の弱いサラリーマン社長では、目先の結果にとらわれがちになるので、どうしても長期を見据えた判断ができない。
が、創業家の場合、企業の将来が自分たちの将来と直結していますから、自然と長期的な発想で経営を行なえる。こうした点が、創業家の強みなのです」