韓国では、国会で朴氏の弾劾訴追案が可決されるのは時間の問題だった。北朝鮮に厳しい姿勢で臨んできた朴氏の政治的危機は、正恩氏には吉報だ。大統領任期を満了せずに、朴氏が退任する事態をにらんだ動きも既に始まっていた。
北朝鮮は自国に融和的な政策を取る新大統領の登場が待ち遠しい。「次期大統領候補者とその側近に関する情報を、急いで収集しろ。心理戦を積極的に展開し、南朝鮮(韓国)世論に北南和解ムードを拡散せよ」。
消息筋によると、正恩氏は最高幹部を前に、そのように檄を飛ばしたとされる。
●しろうち・やすのぶ/北朝鮮事情に精通するジャーナリスト。主な著書に『猛牛(ファンソ)と呼ばれた男』『昭和二十五年 最後の戦死者』『朝鮮半島で迎えた敗戦』など。
※SAPIO2017年6月号