建設費の償還が終わったあかつきには無料化されるというのがタテマエだが、無料化の時期はたびたび先延ばしされ、2014年には2065年に延期と決められた。現時点で20歳の若者が歳を取り、そろそろ免許返納を考え始める頃にという、気の遠くなる話だ。これまでの経緯を考えると、再び延期されることは間違いないところだろう。それまでは無料化どころか、通行料がさらに値上げされかねないのである。
その高速道路網は現在も整備が進行中だが、物流の大動脈となる路線は致し方ないとして、それ以外の有料道路はこれ以上、ビタ1ミリ作る必要はない。実際、地方の新線の大半は、需要見通しに対して実績は大きく下回っている。ユーザーをナメた料金の高速道路を作っても、ほとんどの人は使わないのだ。
今後、日本の道路交通の自由度を上げる重要なカギとなるのは、現状ではおよそ長距離移動に適さない一般道の再整備だ。
地方部をドライブする機会の多いクルマのユーザーは気付いていることであろうが、最近は無料で通れる自動車専用道路が徐々に増えつつある。これらは新直轄方式高速道路や、バイパスの役割を果たす高規格幹線道路と呼ばれる道路だ。
これらの無料道路は制限速度が高速道路に比べて遅いが、信号がなく、また都市部を迂回するルートが取られているケースが多いため、1時間あたりの移動距離は従来の一般道に比べて感動的に稼げる。交通量の多いバイパスは他の道路との接続部分で渋滞が発生するケースがあるが、これは建設費を節約しようとするあまり、接続部分の構造が良くないものになってしまっているのが原因。渋滞解消のための改良は都市部の道路に比べればはるかに簡単だ。
が、こうしたバイパス機能を持つ道路を作るだけでは不十分だ。それと並行して絶対にやるべきなのは、既存の国道の改良である。
日本はモータリゼーションの興りが他の先進国に比べて遅かったため、国道のつくりはきわめて粗末だ。国道のなかでもナンバーが1桁台のものは、本来なら大幹線に位置づけられるべきものなのだが、たとえば国道1号線や2号線を走っていても、郊外に出ると「何だこの田舎道は」と思うような狭い片側1車線の区間が延々と続いたりする。
先に高規格幹線道路について述べたが、幹線というものは本来、高規格に作るのが当たり前で、どこの国でもやっている。フランスは幹線国道の片側2車線化を大々的に推進してきたが、その区間は制限速度110km/hだ。それができていないのは日本くらいのものなのである。
都市部だけでなく郊外でも一般道が走りにくいのは、速度の違うクルマが混走する環境でありながら、その速度差を逃がすための道路設計がまるでなされていないためだ。渋滞発生のボトルネック解消の次に重要な改良はそこだ。