芸能

倉本聰脚本の高齢者向け昼ドラ『やすらぎの郷』の残念な点

番組公式HPより

 ドラマの世界において「新たな試み」であることは確かだ。巨匠による昼ドラを作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏はどう見ているか。

 * * *
 ベテラン俳優陣がキラ星のごとく登場し、新たな「シルバータイムドラマ枠」を作り出した、と話題の『やすらぎの郷』(テレビ朝日系月~金12:30)。倉本聰脚本のこのドラマ、滑り出しの視聴率も予想を超え、世の関心を惹きつけました。何といっても、ターゲットを「ほぼ高齢者」に絞ったことが功を奏したのでしょう。

 独特のゆったりとしたテンポ。現代のスピード感に敢えて「合わせない」作り方。プロデューサーも、意図してそう作っていると語っています。

「ゴールデンのドラマを制作する感覚だったら、3話分を1本の尺にまとめてしまうかもしれない。でも、それはやらない。それこそが、このドラマを放送する意味なんだということです」(プロデューサー・中込卓也氏「コンフィデンス」4月17日号)

 ドラマが開始してから1か月。「とりあえず観てみようか」のお試し期間も終わり、問われるのはいよいよ中味。新しい可能性を拓いたその一方で、残念な点もなくはない。

●残念な点-その1    カリスマ的ベールが剥がれ落ちる

 浅丘ルリ子、加賀まりこ、石坂浩二、八千草薫、有馬稲子、近藤正臣、藤竜也……と70代以上の有名ベテラン俳優がズラリ。ああ、あの人どうしているかと思ったらお元気そう。そんな「顔見せ興業」的面白さ、興味を惹く効果もたしかにある。

 でも、カリスマ的大物俳優として、むしろ夢の中にとどまっていた方がよかった、そんな気持ちがよぎることも。TVのアップ画面で、長セリフを語る姿からはオーラが消え、不器用さやぎこちなさ、年齢の方が目立ってしまうことも。

「大女優」にくだくだ下世話なおしゃべりを聞かされると興ざめ。こんなに普通の人だったかなあ、と魔法が解けてしまう気分。ベテラン世代だからこそ、の事情もあるかもしれません。かつては映画全盛時代。人気を博した俳優の中には、「銀幕の演技」でこそ見栄えした人も。TVの演技と映画の演技とでは、そもそも求められる演技の質が違うから、無理が出るのかもしれません。

 いずれにせよ、せっかく登場したからにはこの人やっぱり魅力的、今後もドラマで見続けたい、また登場して欲しい、と思わせる結果になって欲しいのですが……。

●残念な点-その2   異議申し立ての意欲はわかるが、世相とのズレ

 ドラマの舞台になっている老人ホームは、ベテラン俳優は入れてもテレビ局員は入れないという。「テレビをダメにした張本人だから」と、脚本・倉本氏はセリフの中でバサッと斬っています。そんな風に、今の時代やテレビ界に媚びない辛口の批評性もこのドラマの特徴。

 しかし、こと「タバコ」についてはどうなのか。

 このドラマを見ていると、タバコのシーンがやたら多いのが気になる。一度や二度ではなく、敢えて入れている、と思えるほど頻繁です。タバコ好きの脚本家ゆえ、主人公に「タバコが体に悪いことぐらい、云われなくたって判ってる」というセリフも吐かせています。しかしその情熱が、どこか空回りしているように感じるのは私だけでしょうか?

関連記事

トピックス

奥田瑛二
映画『かくしごと』で認知症の老人を演じた奥田瑛二、俳優としての覚悟を語る「羞恥心、プライドはゼロ。ただ自尊心だけは持っている」
女性セブン
『EXPO 2025 大阪・関西万博』のプロデューサーも務める小橋賢児さん
《人気絶頂で姿を消した俳優・小橋賢児の現在》「すべてが嘘のように感じて」“新聞配達”“彼女からの三行半”引きこもり生活でわかったこと
NEWSポストセブン
NEWS7から姿を消した川崎アナ
《局内結婚報道も》NHK“エース候補”女子アナが「ニュース7」から姿を消した真相「社内トラブルで心が折れた」夫婦揃って“番組降板”の理由
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【厳戒態勢】「組長がついた餅を我先に口に」「樽酒は愛知の有名蔵元」六代目山口組機関紙でわかった「ハイブランド餅つき」の全容
NEWSポストセブン
真美子夫人とデコピンが観戦するためか
大谷翔平、巨額契約に盛り込まれた「ドジャースタジアムのスイートルーム1室確保」の条件、真美子夫人とデコピンが観戦するためか
女性セブン
日本テレビ(時事通信フォト)
TBS=グルメ フジ=笑い テレ朝=知的…土日戦略で王者・日テレは何を選んだのか
NEWSポストセブン
今シーズンから4人体制に
《ロコ・ソラーレの功労者メンバーが電撃脱退》五輪メダル獲得に貢献のカーリング娘がチームを去った背景
NEWSポストセブン
「滝沢歌舞伎」でも9人での海外公演は叶わなかった
Snow Man、弾丸日程で“バルセロナ極秘集結”舞台裏 9人の強い直談判に応えてスケジュール調整、「新しい自分たちを見せたい」という決意
女性セブン
亡くなったシャニさん(本人のSNSより)
《黒ずんだネックレスが…》ハマスに連れ去られた22歳女性、両親のもとに戻ってきた「遺品」が発する“無言のメッセージ”
NEWSポストセブン
主犯の十枝内容疑者(左)共犯の市ノ渡容疑者(SNSより)
【青森密閉殺人】「いつも泣いている」被害者呼び出し役の女性共犯者は昼夜問わず子供4人のために働くシングルマザー「主犯と愛人関係ではありません」友人が明かす涙と後悔の日々
NEWSポストセブン
不倫疑惑に巻き込まれた星野源(『GQ』HPより)とNHK林田アナ
《星野源と新垣結衣が生声否定》「ネカフェ生活」林田理沙アナが巻き込まれた“不倫疑惑”にNHKが沈黙を続ける理由 炎上翌日に行われた“聞き取り調査”
NEWSポストセブン
ハワイの別荘と合わせて、真美子夫人との愛の巣には約40億円を投資
【12億円新居購入】大谷翔平、“水原一平騒動”で予想外の引っ越し 日系コミュニティーと距離を置き“利便性より静けさ”を重視か
女性セブン