当人がタバコ好きであることと、他の人に煙を吸わせたり髪の毛や衣服に匂いを付着させてよいのかどうか、という問題は全く別のはず。
社会は絶えず変わっていく。今や、他人に煙を吸わせない、というのは社会の常識となり国際オリンピック委員会と世界保健機関は「たばこのない五輪」を求め、今国会には受動喫煙防止対策強化法案が出されよう、というご時世です。敢えてドラマの中に“愛煙”シーンを「盛る」ことに、いったいどんな効果があるのだろう、と首をひねってしまう。
「異議申し立て」「反骨」の象徴としての喫煙シーン、というつもりかもしれません。が、むしろ視聴者の感覚とズレを生み出してはいないでしょうか?
●残念な点-その3 説明的セリフの満載はプラスかマイナスか
俳優はしゃべりっぱなし。懇切丁寧に、言葉であれこれ解説してくれる。耳の遠い人、速度についていけない人にも親切。忙しい人にもいい。画面を見ずしてラジオのように音を聞いているだけで物語がわかるのですから。
しかし、いくら高齢と言っても、説明セリフを好まない視聴者だっています。長々と語られるより、沈黙によるドラマツルギーや静寂の中の緊張を楽しみたい人もいるはず。
『やすらぎの郷』のスローなテンポや埋め尽くす大量のセリフについて、ターゲット層の高齢視聴者は正直、どう感じているのでしょう? いったいどんな率直な感想が出てくるのでしょうか? リサーチしてみたい。
というのも、実は中高年をターゲットにして大ヒットしたカップ麺の開発者を取材した時に、こんな話を聞いたからです。
「健康に気を遣っているというシニアは多いが、現実は揚げ物やビールなど、食べたいものを楽しんでいて、欲求に素直に行動する層がいるとわかったのです。ステレオタイプの決めつけをやめた時、『アクティブ』な高齢者の姿が見えてきました」
枠にはまらない姿に気付いたことがヒットにつながった、というのです。案外、ターゲット層は紋切り型からはみ出すのかも。
ともあれ、『やすらぎの郷』は様々な意味でスリリングな実験です。今後のシルバーエイジ向けコンテンツのヒントが詰まっていそう。視聴者の反応にも注目です。