「半年前から日本政府と協議を進めてきた。協力要請はまだ公式に決まっていないが、可能性は高い。日本側も参入に前向きな姿勢を示している」
私の取材に応じてくれた副大臣の寛大さには感心したが、この模様がビデオカメラで撮影されているのが気になった。そこで中国の高速鉄道事業に話を振ってみると、
「予定通り進んでいないことに対する懸念はある」
と繰り返すばかりで、それ以上の具体的な言及はなかった。中国案については他の政府関係者も一様に口が重い。事業主体のインドネシア中国高速鉄道(KCIC)が管轄しているためというのがその理由である。しかし私には、その慎重さがむしろ援助大国・中国に配慮しつつも、日本サイドに期待感を募らせるインドネシア政府の本心を映しているように思えた。
【PROFILE】みずたに・たけひで/1975年三重県桑名市生まれ。上智大学外国語学部卒業。現在フィリピンを拠点にノンフィクションライターとして活動中。2011年『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で開高健賞受賞。近著に『脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』。
※SAPIO2017年6月号