四月二十九日夕方のNHKラジオ「池上彰2017世界を読む」は、「トランプ政権100日・緊迫する世界の行方は?」と題し、米トランプ政権の出現とルペンの言動を取り上げている。出演した政治学者遠藤乾は、フランス革命の三目標に触れ、ルペンに批判的な見解を述べている。やはり、ここにもとまどいが感じられる。普段明解な分析・解説をする池上も、何か寸止めのような趣きだった。
まともなジャーナリストなら誰もうすうす分かっていて、しかしそこに踏み込むと面倒になるので知らぬふりをしていることがある。フランス革命の三目標もその好例だ。三目標は次の通り。
Liberte・Egalite・Fraternite(Egaliteの最初の「e」および各単語の末尾の「e」にはアクサン・テギュが付きます)
初めの二つは「自由」「平等」と訳され、それで正しい。しかし、三つ目は「博愛」ではない。博愛なら原語は Philanthropie のはずだ。
Fraterniteを「博愛」とするのは意図的な誤訳である。それで最近は「友愛」とするようだが、これもおかしい。友愛なら原語は Amitie だろう。
Fraternite は、血縁のない他人なのに兄弟のように睦み合うという意味である。日本語では普通これを「義兄弟」という。睦会(むつみかい)という義兄弟同士の連合組織もある。自由・平等・義兄弟。これがフランス革命の三目標なのだ。右翼のルペンたちが高らかにラ・マルセイエーズを歌うのは当然なのである。「国民国家」もフランス革命を機に生まれた。