英米に留学したというと、金持のお嬢さんの印象があるが、決して名家出身ではない。父親は戦後、裸一貫で自動車修理工場を立ち上げた苦労人。台湾の経済発展は、多くの民間中小企業によって支えられたというが、蔡英文の父親もその一人だろう。

 一代目の父親が苦労したおかげで、二代目の娘は、海外留学することが出来た。この父親は、政治とは無縁な実直な人間だった。政治家になった娘が、敵対する議員とやり合っているのをテレビで見ると、わざわざ電話をかけてきて「言い方を手加減しなさい」と注意したという。

 祖母はパイワン族という原住民だった。「自分に原住民の血が流れていることを知ると、私はとても誇らしい気持になった。原住民は台湾のもともとの住人で、この土地を深く愛している人々だ」。

 猫好きで、猫村として日本でも知られるホウトンへ猫を見に行くなど、微笑ましい。

※SAPIO2017年6月号

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