日本の中高年層と60代オーバーでもカッコよくハイヒールを履いている欧米のシニアたちとの間には、目には見えないものの大きな隔たりがあるようだ。
ファッションジャーナリストの藤岡篤子さんは、「日本人が欧米人に比べて、幅が広くて甲が高い足なので、ヒールが高い靴は足先に負担がかかる」という大前提とともに、「そもそもの歴史が違う」と指摘する。
「日本は下駄と足袋の文化で、靴を履くようになったのはここ100年の話。靴文化で歴史が長い欧米とは、もともとの認識が全く違うんです。日本では年をとってくるとぺたんこ靴というイメージがありますが、向こうでは靴はファッションの一部。
女性はいくつになっても足をきれいに見せるための工夫をし、足のケアをして、美しく見せるためにヒールのある靴を選ぶのはお洒落として定着しています。おばあちゃんと呼ばれる世代になってもべた靴を選ぶことはなく、足がすっときれいに見える4cm程度の安定感のあるチャンキーヒールを選ぶ人が少なくありません」(藤岡さん)
日常生活における靴との向き合い方にも違いがある、と言うのは、早稲田大学人間総合研究センター招聘研究員の吉村眞由美さんだ。
「ヨーロッパは伝統的に靴に対する意識が高い。例えばドイツでは、幼児期の靴は親が選ぶもの。靴は洋服などとは全く違う位置づけで、経験と知識がある大人が買うものという考えです。フランスも同様で、18世紀から王侯のための足外科医という専門医が存在していて、足や靴への考察を進めていました」
そういう基礎があってこそ、どんな世代の女性にとってもファッションの1つとして重要なアイテムとなりえたのだ。
※女性セブン2017年6月8日号