「お参りのとき、寺務所に声をかけてもらうと、スタッフが道案内もします」と千坂さん。

 最近、墓参者が来たのだろう。墓標木、木札の前に花が供えられている区画もあった。

「明日、納骨です」という区画に、ブルーシートが掛けられていた。中を覗くと、直径50cm、深さ1mほどの穴が掘られていた。骨壷は使わず、遺骨をじかに穴の中に埋葬し、その上部に木を植えるのだという。

 契約料は50万円。2体目以降は1体につき10万円で、何体でも。年会費は8000円だが、払うのは生前だけで、埋葬後に家族等が払う必要はない。継承者がいない場合も、撤去されることなく、永続的に保護される。「いわば個別の永代供養墓でもあるな」と思う。

 どれほどの期間で、遺骨は土に還るのだろう。

「5年くらいでしょうか。埋葬して1年足らずで改葬を余儀なくされたケースが1度だけあり、遺骨は半分以下の量になっていましたから。高温焼骨された遺骨はセラミック化して土に戻りにくいそうですが、この地域の土は酸性だから幾分早いのかもしれません」

 樹木葬墓地は、自然公園のような雰囲気のエリア、栗駒岳を眺望できるエリア、水生生物がいるビオトープ近くのエリアの3種類があり、合計約6万9000平方メートル。全体で約2400人が契約済みだという。当初は過半数が関東圏の人だったが、今は4割ほどが岩手と宮城の人。北海道から沖縄まで、全国の人がいる。すでに納骨されているのは1650人。

「まだあと1万人分くらいが空いていますよ」って、なんという余裕!

「『花に生まれ変わる仏たち』がキャッチフレーズです。もうすぐニッコウキスゲの黄色い可憐な花が一面に咲きますよ」

 そんな話を聞きながら、散策路を行きつ戻りつしたが、緑のシャワーを存分に楽しめ、鳥たちの大合唱も聞こえた。オタマジャクシが泳ぐ水辺にも足をとめた。墓地というより、快適なハイキングコースを歩いている感覚だ。

※女性セブン2017年6月8日号

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