「そこで基礎研究の大幅な推進のため研究棟を新設、木クレオソートの安全性や薬効に関する臨床試験等を徹底して行ったのです。研究員も大幅に増員しました。私もその当時の入社組です」と三浦氏は振り返る。
その後は効果と安全性に関する多くの論文を世に出した。その結果、1990年代末には米国国家毒性プログラムや米国環境保護庁において木クレオソートは発がん性物質から削除されることになった。2016年、木クレオソートは「化学医薬品」から「生薬」へと分類変更された。
「人類の宝といってもいい伝統薬ですので、今後も未知の効果が発見される可能性がある」(三浦氏)
今、注目を集めている、寄生虫アニサキス症に対する効果も解明され3年前に特許を取得したばかり。
長い歴史の中で使われ続け人類に選び取られてきた植物の力。その解明は今もまだ現在進行形だ。そして何よりも、木クレオソートをメインに研究する企業が、世界広しといえども大幸薬品だけ、という点こそ注目すべきだろう。胃腸薬「正露丸クイックC」はより速度感を増していく現代社会の中で、世界中から常備薬として求められヒットする可能性を秘めているのだから。
■文/山下柚実(作家)
※SAPIO2017年7月号