だが、金密輸商売には懲役や禁固はないものの、危険が伴う。

「海外で金を買ったと申告せず、通関しようとして発覚した場合、消費税相当分8%の他、最近では消費税分の3~4倍の罰金を科されます。金はいずれ持込み人に返されますが、3~6か月も税関に領置されて、その間は現金に換えられない。借入金で金密輸をやった者はもろにパンクします」

 金はここ10年ほど値上がりが激しく、1キロ当たり500万円弱。額が大きいから利幅8%でも、持込成功の場合は儲けが大きい。

「福岡で金密輸がらみの事件が多いのは、福岡なら税関が甘いだろうと見る中小の業者が利用するからです。大手は税関がどうだろうと、LCCがバンバン離着陸して税関が忙しい成田、羽田を利用、かえってばれていない。

 もっとも事件の中には仲間うちの狂言強盗もあるようだ。この場合は金主(資金の出し手)に強盗被害に遭ったと言ってカネを奪われたことにして、騙し取るのが狙いと聞いてます」

 この密輸業者によれば、密輸を手掛ける者は半グレ集団が中心だという。一部暴力団も参入しているが、見よう見まねで始めているから失敗が多いとされる。

●みぞぐち・あつし/1942年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。『食肉の帝王』(講談社刊)で講談社ノンフィクション賞を受賞。『闇経済の怪物たち』(光文社新書)、『薬物とセックス』(新潮新書)など著書多数。

※SAPIO2017年7月号

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