◆買い付けは「安・近・短」
金密輸は狂うほど儲かると推測されるが、利益は最大でも消費税相当分の8%だけと大手の密輸業者は説明する。
「金は世界的に非課税が主流ですが、日本、韓国、インドでは金の売買に付加価値税や消費税をかける。金の裸の価格は全世界、どこでも同じです。だから国境を越えて売買しても、ふつうは利ざやが発生しない。
しかし日本では売り買いとも8%の消費税がかかる。だから、たとえば香港で金を買う。非課税です。それを機内持ち込みし、日本に運ぶ。見咎められることなく通関できれば、金取扱店で売る。と、黙っていても、消費税8%分を加算して買ってくれます。即ち、これが儲けです」
金密輸の儲けの仕組みは極めて簡単なのだ。
「ただ金の持ち出しを禁止している国もあります。持ち出しに制限がない国や地域に香港、アモイ、ドバイ、シンガポールなどがあり、業者はその辺りで買うことになる。だが、買付する場合、できるだけ経費はかけたくない。そのため宿泊の必要がなく、日帰りも可能で、LCC(格安航空会社)が頻繁に飛んでいる地域、つまり香港などで買い付けることになります」
金の延べ棒は重い。具体的にはどう運び込むのか。
「業者の中心メンバー当人が運ぶ場合も多いんですが、組織的にやる業者は『海外から4~5キロ、金属の塊を持ってくるだけで小遣いになるぞ』といって若い者に運ばせる。
ふつうは1回に4~5名のチームを組み、1人に4~5キロを持たせる。1回に20キロ前後、購入価格で1億円未満、1回の利益が1000万円を欠ける程度のシノギになる」