山本氏は同書でそんな「空気」の正体をこう分析してみせた。
〈それは非常に強固でほぼ絶対的な支配力をもつ「判断の基準」であり、それに抵抗する者を異端として、「抗空気罪」で社会的に葬るほどの力をもつ超能力であることは明らかである〉
いま、日本社会に不思議な現象が続いている。大臣の失言が続いても、森友や加計で批判を浴びても、なぜか安倍内閣の支持率は下がらない。逆に“告発者”である森友の籠池泰典・前理事長、前川前次官らが大メディアであたかも“ヘンな人”であるかのように扱われている。前川発言を評価した石破茂氏まで自民党内で“困った人”扱いされている。山本氏の言う「抗空気罪」であるかのように。
どうやら安倍首相は「空気という妖怪」を手なずけているらしい。だが、昔からそうだったわけではない。むしろ、首相は妖怪に苦しめられた経験を持つ。「KY」という言葉が最初に流行したのは10年前、2007年だった。ちょうど第1次安倍政権末期の頃である。朝日新聞に初めて登場したのもこの年だった。
〈最近、中高校生の間では、「KY」という言葉がはやっているらしい。「K」とは「空気」、「Y」は「読めない」。仲のいい友人同士の間で、周囲の雰囲気に気づかず身勝手に行動する級友がいたら、「あの子はKY(空気が読めない)だ」という使い方をする。この若者言葉が安倍首相を評する時にも使われている〉(2007年8月10日付)