◆世界的なコスト・プッシュ・インフレ
しかし、周知の通り、日本のバブルは4年余りであえなくはじけて地価が暴落し、銀行が次々とつぶれて日本経済は「失われた20年」に突入した。中国も同じ轍を踏み、(日本は何とか持ちこたえた)製造業が崩壊しているとなれば、かつての日本以上の惨憺たる状況になるだろう。すなわち中国経済の「インプロージョン」だ。
また、中国の製造業が崩壊したら、世界が困る。なぜなら「世界の工場」と呼ばれている中国に代わる製造基地はどこにもないからだ。
たとえば、広東省だけでも人口は1億人以上で、ベトナムの約9300万人よりも多い。ベトナムやタイの人口では中国全体の製造を代替することは到底できないし、人口約1億6000万人のバングラデシュは輸出する港湾などのインフラが整っていないので、ジャスト・イン・タイムで製造しなければならない商品には対応できない。ミャンマーもインフラが整っていない上、まだ政府の役人に賄賂を渡さないと輸出枠をもらえないというような状況だ。
したがって、中国の製造業が崩壊した場合、中国製品を輸入している国々で物価が高騰し、世界的な「コスト・プッシュ・インフレ」が起きるだろう。とくにアメリカは様々な物を中国から輸入しているので、ウォルマートやコストコなどの棚は空っぽになると思う。