山崎氏は、日本金融学会で講演した際には「メガバンク界隈では、慶應出身者以外は出世しないので、就職を勧めない」と本音を口にしたと明かす。それほど三田会を通じて「ステップアップの機会」を得ることは大きいようだ。さらに、三田会の“威光”は転職にも有利に働くという。
「ヘッドハンターを経由しなくても、どこでどんな人材を求めているかは三田会経由でわかりますし、同窓なら採用する方も好感を持って受け入れます」(山崎氏)
慶應大学大学院法学研究科の出身で、慶應大学新聞研究所講師も務めた岩井奉信・日本大学教授は、三田会の強さをこう説明する。
「慶應の場合、他大学の同窓会組織に比べてOBの所在の捕捉率が高いという特徴があります。他の大学の同窓会組織は大学とは別のOB会組織が運営していることが多いのですが、慶應の場合は大学に“塾員課”があるので、卒業生の名簿管理がしっかりしています。
また、塾員は4年に1度の評議員選挙への投票権を持っているのですが、その集票活動が活発です。そうなると、4年ごとに自分が塾員だったことを思い出し、自覚させる効果もあるのです」
そうして結束が固いからこそ、こんな逸話も生まれるのだという。
「日本IBMの三田会は活動が活発で、会長が三田会の評議員を務めていたこともある。ところが、慶應大学がIBMではなく富士通のパソコンを導入したため『なぜ富士通なんだ!』と激高したという逸話が残っています」(同前)