肥満体形の人に多いのが、睡眠時無呼吸症候群。本人は寝ているつもりでも、脳と体は断続的に覚醒しているのだ。『脳には妙なクセがある』(扶桑社新書)などの著書がある、東京大学薬学部教授の池谷裕二さんが解説する。
「そういった人の大脳皮質を調べてみると、本来は深い眠りにあるとき脳全体に起きるべき徐波睡眠が、あちこちパッチワーク状に部分的に起きているんです。これはある意味異常事態です。徹夜して昼間仕事をしている人の脳にも同じ状態が起きていることがわかっています。
マグロやイルカと同じです。ずっと泳いでいないとダメなんだけど、どうやって寝るかといえば、右脳と左脳を半分ずつ休ませる。これの応用版みたいなものでしょうか。眠りが浅いとは、一応は寝ているのですが覚醒している部分がある不完全な睡眠です。だから昼間もぼ~っとするし、仕事の効率も悪くなる。そういう意味でも睡眠の質って、とっても重要なんですよ」
ではどうしたら質のいい睡眠をしっかりとれるのか? 日本初の睡眠障害専門外来を開設した睡眠障害のエキスパートである久留米大学医学部神経精神医学講座の内村直尚教授は、「まずは平日と土日の睡眠時間を一定にすること」とズバリ。
「休日の寝だめは意味がありません。睡眠は貯金ができないのです。いつも一定の時間に起きて寝るという一定の睡眠リズムを作り、昼間は太陽の光を浴び、体を動かすこと。これは非常に大切なことで、人間の睡眠は体温のリズムと密接に関係していて、いちばん体温が高くなるのが夜の7時くらいで、いちばん低くなるのが朝の5時頃。この差が大きいほど、深く眠れます。昼間の運動は最高体温を上げるので、よりよい睡眠につながるというわけです。
年を取ると、最低体温が上がって、最高体温が下がるので、眠れなくなる。だから無理なく運動するのがいい。夜寝る前は、逆に脳が覚醒するのでダメです」
夜寝る前に、スマホ、パソコン、テレビ、ゲームをすると交感神経を刺激するのでNG。前出・池谷さんは、30分の昼寝をおすすめする。