今年5月には麻生派と山東派、谷垣派の一部が合流することで合意し、7月の都議選後に約60人の新派閥を立ちあげる。最終的には、もともと谷垣氏が所属していた宏池会(岸田派)と合併して分裂している保守本流派閥・宏池会を再結集し、100人規模の「大宏池会」を作って安倍首相の出身派閥である細田派(96人)に対抗する構想だ。麻生氏は派閥合流を決めた会見(5月15日)でこう語っている。
「同じ政党の中でいろいろ意見が違うのは当たり前の話。かつて(安保重視の)岸信介内閣があって、(経済重視の)池田勇人内閣ができたり、自民党の中で大きく方向を変えてきている。そういった形を今残したい」
自民党はタカ派政権が行き詰まればハト派の総理に交代する、“振り子の論理”と呼ばれる党内の疑似政権交代で長期政権を維持した。2大派閥体制を作ることで、細田派の安倍首相の次は、新・麻生派(大宏池会)から首相を出すという“政権奪還宣言”といっていい。政治ジャーナリストの角谷浩一氏が語る。
「安倍首相や菅義偉・官房長官は森友学園と加計学園疑惑によって、政権の足元に火がついているタイミングで露骨な派閥拡大を進める麻生さんの動きに神経を尖らせている。谷垣さんはもともとその麻生派との合流に慎重な考えだった。官邸は谷垣さんを政界復帰させて副総理で重用することで、麻生氏を牽制しようと考えているのではないか」
仮に、谷垣氏が政界に復帰し、「車椅子の副総理」となれば、当然、麻生氏は副総理から外される。その布石に見える動きもあった。