◆治療して「生活の質」が落ちた

 東京都在住の78歳男性は、3年ほど前から誤嚥性肺炎を繰り返してきた。

「激しい咳と39℃以上の高熱が続き、意識障害や呼吸困難に陥って入院。退院できたと思ったら、また肺炎を起こして入院の繰り返しです。入退院のたびに体力が落ち、今では自力でトイレに立つこともできなくなった。明らかに死が近づいているのが分かります」

 誤嚥性肺炎は抗菌薬によって治療する以外にないが、同じくガイドラインを作成した長崎大学医学部第二内科の迎寛(むかえ・ひろし)医師は、治療の難しさをこう語る。

「誤嚥性肺炎を繰り返していると、多くの種類の抗菌薬や広範囲の細菌に効果がある広域抗菌薬を使うようになる。前者は高齢者の場合、副作用が出やすくなり、後者は繰り返し使ううちに抗菌薬が効かない耐性菌ができ、その耐性菌によって肺炎になるという最悪の事態も引き起こすのです」

 最終的には、人工呼吸器や「IVH(中心静脈栄養法)」による延命治療に移らざるを得ないことも少なくないという。

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