お墓の問題は、「どこに入るか」ともう1つ、「誰と入るか」ということも根深い悩みだ。夫や、夫の両親とは、死んだ後まで一緒は嫌。あるいは一緒に入る伴侶がいない――その時、あなたならどうしますか? ある決断をした女性たちの話をお届けします。(文・写真/ノンフィクションライター・井上理津子)
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東京・新宿と京都・宇治に、合葬ではなく、自分1人で眠れる女性専用のお墓がある。東京・新宿は、浄土真宗東本願寺派・無量寿山光明寺の東京本院・新宿瑠璃光院。「高級感あふれる室内墓所」「新宿南口徒歩3分」がキャッチフレーズのスタイリッシュな都心のお寺だ。
半個室の参拝所に、保管庫から厨子(納骨箱)が運ばれてきて、共用の墓石にセットされる自動搬送式の室内墓を擁すが、その中に「女性専用の個人墓」があるのだ。私が調べた限り、この形式の女性専用のお墓は他に例がない。
「七回忌法要の後、満天の星の下へお連れいたします」
業務統括推進本部長の木下尚子さんは、そう表現する。七回忌の供養後に、遺骨は系列の京都府宇治市の「京都天が瀬メモリアル公園」に運ばれ、やはり女性専用区画に移される仕組みである。利用料50万円で、管理費不要。人気が高く、残念ながら目下は「第l期完売」の状態だ。
もっとも、京都天が瀬メモリアル公園の女性専用区画「天空葬コスモガーデン」に直接入る(20万円~)のは受付中とのことで、行ってみた。
京都駅からJR線に約25分乗ると宇治駅。そこから、車で10分ほどの緑濃い地に広がる、芝生が敷き詰められた明るい霊園だ。
和型や洋型の石墓が並ぶ奥の一角に小川が流れ、「天空葬コスモガーデン」があった。芝生の上に、白い大理石の小さなプレートが点々と配され、ローマ字の名前と誕生日の星座が彫られている。外国の墓地の小型版のような雰囲気だなと思った。
「ご遺骨は粉骨せずに、きれいなオーガンジーの袋に移し替えて、全骨を納骨します。何年経っても合祀されない永代供養墓です」と木村さん。契約した女性の年齢層は、30代から90代まで幅広いという。佇んでいると、せせらぎがかすかに聞こえる。
ここもなかなかいいなあ――と思いきや、木村さんがこんなことを教えてくれた。
「小川を作って他のお墓のエリアと区切ったのは、『自分は1人なのに、隣から、家族の楽しそうな声が聞こえてきたら嫌だ』というかたがいらっしゃり、そのかたのお気持ちにお応えしたからなんです」
なぜ「女性だけ」のお墓を選択したのか――私の問いかけに口をつぐんだ数人の女性の顔が浮かんだ。
※女性セブン2017年6月29日・7月6日号